あの人はふだんから本を読むような人ではないから、読むペースは俺と比べると遅かったけど、それでも毎日少しずつでも本の話ができるのは嬉しかった。
クリスマスイブイブを一緒に過ごせたのは嬉しかったけど、はしゃぎすぎた俺は思わず気持ちを口に出してしまった。もちろん丁重にお断りされたけど。
そして今日の朝、俺の机の上には、一枚のメモとあの人に貸した本が置いてあった。
「〇〇さんへ 昨日はすみません これ返します、面白かったです」
本を開いてみると、後半のページに栞が挟んだままになっていた。最後に読んだと話していたシーンで物語は止まっていた。
ああ、あなたはもう俺とは話してもくれないのですね。