部屋の前にいる連中は警察官であり、返事をする必要があるとお前は知っているが、まだ身体は目覚めていないため、ただモゾモゾと動くことしかできない。
しかし、そのわずかな身じろぎの気配をドア越しに鋭敏にも感じとった警官たち(どうやら、4人ほどいるようだ)は、お前が居留守を決め込んでいるのだと判断する。
ドアが叩かれる。容赦のない叩き方だ。
「増田さん!」「増田さん!!」「いるんでしょ!」「増田さん!!!」
男たちが声を上げる。警官は全員男で、全員野太い声をしている。声量は、ちょっと驚くほどに大きい。
お前は焦る。早く応えないといけないが、恐怖のあまり喉がつっかえて、声が出ない。立ち上がろうとするが、足がもつれてうまく立てない。「増田さん!!」「増田さーん!!!」「出てきて下さーい!!」
その声で目を覚ます。
耳には、お前の情けない叫び声が残っていた。