2017-10-22

貧窮問答歌一首 并短歌 山上憶良頓首謹上

風雑 雨布流欲乃 雨雑 雪布流欲波 為部母奈久 寒之安礼婆 堅塩

乎 取都豆之呂比 糟湯酒 宇知須々呂比弖 之叵夫可比 鼻毘之毘之

尓 志可登阿良農 比宜可伎撫而 安礼乎於伎弖 人者安良自等 富己

呂倍騰 寒之安礼婆 麻被 引可賀布利 布可多衣 安里能許等其等 

伎曾倍騰毛 寒夜須良乎 和礼欲利母 貧人乃 父母波 飢寒良牟 妻

子等波 乞弖泣良牟 此時者 伊可尓之都々可 汝代者和多流 天地者

比呂之等伊倍杼 安我多米波 狭也奈里奴流 日月波 安可之等伊倍騰

安我多米波 照哉多麻波奴 人皆可 吾耳也之可流 和久良婆尓 比等

々波安流乎 比等奈美尓 安礼母作乎 綿毛奈伎 布可多衣乃 美留乃

其等 和々氣佐我礼流 可々布能尾 肩尓打懸 布勢伊保能 麻宜伊保

乃内尓 直土尓 藁解敷而 父母波 枕乃可多尓 妻子等母波 足乃方

尓 囲居而 憂吟 可麻度柔播 火気布伎多弖受 許之伎尓波 久毛能

須可伎弖 飯炊 事毛和須礼提 奴延鳥乃 能杼与比居尓 伊等乃伎提

短物乎 端伎流等 云之如 楚取 五十戸良我許恵波 寝屋度麻弖 来

立呼比奴 可久婆可里 須部奈伎物能可 世間乃道

世間乎 宇之等夜佐之等 於母倍杼母 飛立可祢都 鳥尓之安良祢婆

風交り 雨降る夜の 雨交り 雪降る夜は すべもなく 寒くしあれば 堅塩を とりつづしろひ 糟湯酒 うちすすろひて しはぶかひ 鼻びしびしに しかとあらぬ ひげ掻き撫でて 我れをおきて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば 麻衾 引き被り 布肩衣 ありのことごと 着襲へども 寒き夜すらを 我れよりも 貧しき人の 父母は 飢ゑ凍ゆらむ 妻子どもは 乞ふ乞ふ泣くらむ この時は いかにしつつか 汝が世は渡る 天地は 広しといへど 我がためは 狭くやなりぬる 日月は 明しといへど 我がためは 照りやたまはぬ 人皆か 我のみやしかる わくらばに 人とはあるを 人並に 我れも作るを 綿もなき 布肩衣の 海松のごと わわけさがれる かかふのみ 肩にうち掛け 伏廬の 曲廬の内に 直土に 藁解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子どもは 足の方に 囲み居て 憂へさまよひ かまどには 火気吹き立てず 甑には 蜘蛛の巣かきて 飯炊く ことも忘れて ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を 端切ると いへる がごとく しもと取る 里長が声は 寝屋処まで 来立ち呼ばひぬ かくばかり すべなきものか 世間の道

世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

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