夜中にふと目が覚めて、トイレに行き
ぼーっとしながら用を足していたら、こぼしてしまった。
トイレットペーパーに手を伸ばすと、目の端に黒い獣が見えた気がした。
驚いてそちらに目をやると何もいない。
そして、二階の寝室に戻ろうとすると、ドアの前に一匹の黒猫がいた。
あっ、さっき見えたのはこいつか。どっから入ったんだ?
さっさと捕まえてしまおうと、手を伸ばすと、
その黒猫は、怪しい笑いを浮かべながら、異様に細く首をにゅーっと伸ばし、
目を黄と青に輝かせ、下をペロペロと出して、俺の手を舐めようとした。
と思い切って首根っこを捕まえて、両手で押さえつけた。
俺は子猫を手に持ったまま、急いで二階に上がって、妹を起こした。
「おい、こいつが見えるか」
妹は目をこすりながら「うん」と言った。
俺は自慢げに「下で捕まえたんだ」と言いながら
俺が子猫だと思って手に持っていたのは、
いつも使っているハンドクリームの瓶だった。
「おい、お前は最初からこれがハンドクリームに見えていたのか」
と妹に聞くと、妹は「うん」と言った。
俺は「そうか......」というと、そのまま黙ってしまった。