三十路を過ぎてしばらくして突然、仕事にも趣味にも急に興味をなくしてしまって、生まれて初めて無気力になった。それと同時に友人の子供や道行く人の押すベビーカーの中の乳児、テレビの中の子供たち、とにかく子供という子供が可愛くて愛おしく見えるようになった。あんなに嫌いだった乳児の泣き声にも以前ほど苛立たなくなった。何もかも楽しくて他の誰の人生よりも好きでいられた自分の人生が急にどうでもよく思えて、子供を育てている友人を羨む気持ちがあることにも気が付いた。
数年前に結婚したので子供を産んでもいいはずだ。だけど何か恐ろしくて、仕事だけ大好きだった自分に戻りたくてずっと悪あがきをしている。どうして素直になれないのかわからない。