「朝が早いのに眠れない夜はどうすればいいんだろうね。」
私は、半分ほど入ったミルクティーをゆっくりとかき混ぜながら言った。
平日昼間の、静かな喫茶店の中である。太陽の明かりが漏れ込んでいる明るい路地を歩く人々が、時折中を覗いては去っていく。
瀟洒な店内には私達二人と老年の夫婦しかいなかった。
クリームソーダを飲み終わった彼女は、手に持っていたストローの袋を少しつまらなそうに弄っていた。
「それは、私にはわからないわ。狐には眠れない夜なんて存在しないもの。」
その時、私は初めて彼女を羨ましいと思った。
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