ある人が黒い石を拾う。
それは紛うことなき黒色であり、それを見つけた彼は英雄となる。
つまらない連中が「俺も英雄になりたい」と大挙してやってくる。
しかし黒い石が見つからない。
そのうち誰かが灰色の石を掲げて「黒い石だ」と主張する。
周囲の人々は確かに黒い石だ、君は英雄だと褒めそやす。
なぜなら自分もそんな石を拾って英雄と呼ばれたいからだ。
灰色の石が次々に掘り出されて「黒い石」とされていく。
そのうち灰色の石も無くなってくる。
英雄になりたい者はまだたくさんいる。
誰かが白い石を掲げる。
周囲は褒めそやす。
「それは白い石だろう」とは言えない雰囲気になっている。
いや、彼らには本当に黒く見えているのかもしれない。
遠い街に噂が伝わってくる。
「あの土地からは次々と黒い石が出てくるらしい」。
あの土地には黒い石がたくさんあるのか、と人々は思ってしまう。
さて、ゴールドラッシュでいちばん儲かったのは雑貨屋だったという笑い話があるが、黒い石で儲かるのはいったい誰だろうか…。
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