終戦記念日になるといつも母に地下の納骨堂へと連れて行かれた。
扉は銀行の地下金庫のように黒く重く、丸いハンドルがついており、
私はその部屋に入ることはもちろん、近づくことも嫌だった。
それでも母の命令は絶対で、私は泣く泣く納骨堂へ入らさせていた。
納骨堂に入ると母は嬉しそうにずらりとならんだ骨壷の一つを選び、
おもむろに蓋をあけて
「ほら、これが人骨だよ」と言って、
嫌がる私に骨を見せつけるのが大好きだった。
母はそこで人骨をポリポリとかじるように食べはじめた。
私はうれしそうな母が怖くてとにかく逃げ出したい一心だった。
小動物のように怯える私を眺めるのが母の喜びにだった。
ある時は父を教えてもらった。
もう、やめて……。何回も何回もお願いした。