毎朝同じ通勤電車に乗って終点で降りるのだが、最近、終点に着く二分ほど前に、目覚まし代わりなのか、スマートフォンで大音量で音楽を鳴らすおっさんが乗ってくるようになった。
どれだけ大きいかというと、二両離れた俺のところにまでイントロからはっきりと聞こえるレベルだ。
少し鬱陶しいので、事前に同じ曲を手持ちのスマートフォンにコピーしておき、おっさんの隣に座り、おっさんのスマートフォンが鳴る五分前に同じ曲を大音量で鳴らしてみた。
おっさんは慌てて目を覚まし、鞄の中のスマートフォンを取り出しながら電車を飛び出したが、いつもと違う風景に一瞬混乱しつつ、一駅早く降りたことに気づいたか、扉が閉まる直前に再び電車に飛び込んだ。
どうやら俺が鳴らした事に気付いていないようで、終点に着くまで不思議そうな顔をしながらスマートフォンをいじっていた。そして、いじっている最中に大音量で再び同じ曲が流れ出し、慌てて再生を止めていた。
時々脅かしてやるかな。
どれだけ大きいかというと、二両離れた俺のところにまでイントロからはっきりと聞こえるレベルだ。 どこの田舎の鈍行列車だよ