「これはひとつのさよならだ。」
そう言って最後のハグを求めた。
何日か前からそれはわかっていた。
その時まで自分の甘えを許してしまった。
ひどいと思いながら、自分を許した。
そしてそれを彼女のせいにした。
それは本当は自分へのさようならだ。
彼女に恋していた自分へのさようなら。
本当はそこに彼女はいない。
僕はその儀式に彼女を利用した。
最後のハグを受け入れてくれたのは彼女のやさしさだろうか。
少し長いハグだった。
最後に鼓動がひとつおおきく鳴った。
お互いの今後の幸運を祈りハイファイブ。
エレベーターの中で気持ちのよい最後を演じきったことへの満足感じながら、淋しい自分を演じる準備をした。
セントラル駅に向かうトラムに乗りながら、彼女が少しでも淋しい思いをしないだろうかと祈っていた。
自分勝手についてはきっと僕が一枚上手だ。
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