Twitterは、UNIXシステムにおけるwallコマンドを無制限解放しているような物で、全ての発言を垂れ流し、受け取る側がその発言を表示するかどうかを判断するフィルターをかますサービスと私は解析している。
大量の発言をブロードキャスティングする都合から、発言の文字数に制限を加え、たとえばURLのような比較的多く使われる文字列を短縮表記できるbit.lyのようなサービスを使っている。
サクラを使って企業サイトの宣伝を流すと、最初は、企業サイトを見に来てくれるかもしれない。しかし、それがサクラであることがバレた時点で、その発言者はフィルターリストに入れられ、発言を見てくれる人を失うことになる。アカウントをでっち上げて別人として始めたとしても、リンク先の短縮表記が同じならば、そのリンクが発言の中にあったからという理由でサクラであるという判断が下されて、非表示となる。つまり、newcomerだけしかサイトに引き込めないという点、さらに、サクラを使って宣伝している会社というネガティブイメージを持たれてしまうというデメリットが発生する。
これは、企業の宣伝目的のBlogをでっち上げて、有名サイトにトラックバックを入れまくって、それらのサイトの閲覧者を引っ張り込もうとするのと同じようなモノで、最初の一回は効果があるが、効果よりも悪名の方がとどろく事になる。
つまり、利用者を装って宣伝をしようという考え方は、間違いなのである。
多くのサイトからリンクを張られると検索順位が上がるという構造に対し、リンクを捏造して検索順位を上げるSEOが発生したが、Twitte以降は、サーチエンジン経由の来訪者よりも、bit.lyの短縮表記URL経由の来訪者の方が多くなってきている。既に、サーチエンジンの来訪者誘導力は、Twitterに負けているのである。
ブログや掲示板で話題にするよりも、Twitterで話題にされ、それを見た人がリンクを辿ってくるという構造があるならば、Twitter自体に広告を押し込むか、リンクの先のサイトに広告を入れる事を考えた方が効率的といえるし、twitter.会社名.comという中継サーバーを提供して、そのサーバーを利用するユーザーのログイン時とログアウト時に表示するメッセージを自由にする権利を入手するという手もある。中継サーバー同士の通信は言語や地域によって分割可能であり、総流量を押さえられる。Twitter社にしても、リンク先の情報源にしても、霞を食べて生きているわけではないのだから、ねじ込む隙はあるであろう。
なお、私はTwitterを使っていないので、この予測は間違っている可能性がある。さらに、Twitterを使わない理由であるが、IRCが複数サーバーを使い、さらに、世界を言語や国境に従って分割して運用しているという現実を見ているからである。Twitter社の挑戦は面白いが、IRCとして長年運営されてきた安定性や抗堪性に追いつくまでの投資は難しいし、非合理的であると判断しているが、Twitterがサーチエンジンの鼻をへし折ってくれるならば、それはそれで良い事なので放置するというスタンスである。
Blogによるリンクやトラックバックの増加は、サーチエンジンを慌てさせたが、サーチエンジンそのものの利用に依存するという点で、構造の変換にはならなかった。しかし、Twitterは、リンク先サイトの推薦者と直接話が出来るという、リンク先の価値を生身の人間が保障する構造になっており、リンク数による重み付けやサーチエンジン側の基準でのレーティングといった不透明な評価とは別の評価基準を持ち込んだ事になる。このサーチエンジンに依存しないインターネットカルチャーがどこに行き着くかは、もうしばらく様子を見なければわからないのだが、興味深い変化である。