オンライン上で、fromdusktildawn氏のエントリを見て正面から、反論してくる組合の人はいるだろうか。
と呼ばれたので少し書いてみようと思う。もっと分裂君(fromdusktildawn氏のこと。以下こう略す)のエントリに言及するのは気が進まない。だって本人が「このブログの内容は極論でありありていにいえば嘘、極論を述べて楽しみ、極論の中の一片の真実を探るものだ」と言ってるわけだから。
だから、正直「正面からの反論」に意味があるとは思えない。その極論は、「極論」だけに様々なことを故意に無視して、あるいは故意に前提としてできあがっているから。
その中には、たとえば引用した上の増田さんが指摘した通り「想像上のサヨクでなく、現実の左翼が日々どういう活動をし社会の中にどう組み込まれているか」と言った問題が潜んでいたりする。大体御用組合とそうでない組合の差なんて、組合の中枢部で動いている人間にだって分からん。それこそ「経営評価委員会」みたいなものでもつくって、組合の功罪について裏表全て出してみて、「結果として」その組合が労働者により役立っているのか、会社にとってより役立っているのかが評価できるかどうか、というところだし。大体、労働者だけに有利で会社にとっては不利な存在でしかない組合など、現代の労働者自身が求めていないしね。
まあ、増田さんとは違って分裂君は、そのあたりの事情をあえて無視している(経営者とかにも知り合いが多いと書いてるから知らないわけはない)のだと思う。まあこれは些細なことに過ぎないけれども。
そんな彼のエントリが「真面目に」読まれているとしたら、それはやっぱり不幸なことだ。だから反論しようとは思うのだけど、そうやって真面目に分裂君のエントリに「反論」しようとすると結局それは彼の「極論」を成立させているネタのネタバラシみたいなことをするしかない。これはぶっちゃけ彼のエントリをつまらなくするので読まない方がいいくらいだ。やれと言われたからやるけど、本来これは自分の作法ではない。先に謝っておく。
:::::::::::::::::::::::ツッコミ開始:::::::::::::::::::::::
(1)経営についてもサヨクにしても、実は想像上のそれしか比較されていないこと。
彼のサヨクに対する批判が想像上のものだと上で述べたが、良く読めば分かる通り彼が述べる「経営体」としての企業の役割や社会に対する貢献、そしてその評価についても、全て理念的な話でしかない。
現実の所、企業が提供する「豊かさ」(A)が、我々の望む豊かさ(B)とイコールであるかどうかについて評価しない限り両者は比較できない。そして、明らかにAをBに一致させるよりは、AをBだと勘違いさせる方が安上がりであり、そして現実の社会というのはそういう安易で安上がりな方向へと流れていくものだ、ということさえ、分裂君はあえて触れない。
一方、ネオリベの提唱する「理想社会」のイメージだけを見て褒め称えているが、本当の所彼だって、現実のネオリベが混乱と貧困をもたらしていたとしてそれを「ネオリベの『理想を正しく実現していないからだ』」などという原理主義者のようなことは言わないだろう。だから「極論」
というわけで、理想だけを見て現実をみていない、これが第一ポイントです。
(2)話の根幹となっている「労働者に必要な『経営スキル』という概念」について
さんざんドラッカーを引用して語って、これも各個人が戦略的に社長のように振る舞い、その総和としての社会が…という話に見えて、全然違う。本当のところ分裂君のこれ、実は『資本論』を下敷きにしてるんだろう。「サヨク」を揶揄しながらこういうことをする。分裂君、結構人が悪い。マルクスが言ったことの中でもっとも重要なポイントの一つはまさに「労働者は企業の奴隷じゃねえ!『労働力』を企業に販売する経営者なんだZE!」ってことで、言ってみればそれは組合の理念の根幹部分。だから、個人的にはこれ笑うところかなと思いながら読んだ。このエントリ自体が高度な釣りというかJokeなのだとすれば、このあたりに一つクスグリをいれてみたということではないか。
(3)結局のところ彼の論に基づけば、社会的なセーフティネットは『無い』という事実
まず、一所懸命繕おうとして繕い切れない問題として、分裂君は有効に機能する社会的セーフティネットについて論じていない、という点。たとえば教育に関して「教育クーポン」が機会の平等を実現するかのように語っていますが、教育クーポン自体こそが社会的強者にとって最も有効に使えるツールであるという点には触れない、つまり結果の不平等が拡大されやすい政策だ、とかね(個人的には、アイデアとしての教育クーポン自体には意外と賛成だがそういう負の問題を解決しないとどうにもならないとも思う)。公害問題についても、色々なアイデアは紹介するけど、それが実際に公害を解決するかどうか、は言わない。
そこを彼は「経済的自由と結果の平等はトレードオフだから仕方ない」という理屈でクリアしようとしてるわけですが、ここにも詐術があって、
1.経済的自由と結果の平等がトレードオフだというためには、「稼ぐ金=やる気(インセンティブ)」という価値観が前提される必要があるが、これが正しいとは限らない。というより、それは明らかにドラッカーさんに批判される考え方。
2.結果の平等を実現することで発生するインセンティブには触れない。『歴史的な社会主義の失敗』を批判する一方で、『ある種の成功した社会主義』と言える社会(たとえば戦後「総中流社会」日本)には全く触れない。
という二点。
この二つを無視し、そして人間を統計の比喩で語って「一部の10km/hでしか走れない車のために、大多数の時速を10km/h制限にするのは正しいか?」という極端な比喩を持ち出す。
確かに、人間を統計的にしか処理しないなら「1%の人を見捨てる社会は99%にとって住みよい社会」と言えるかもしれない。でも実際問題、そんな風に考えて我々は暮らしていけるだろうか。
たとえばみなさんが子どもなら、1%の人を見捨てて幸せを謳歌する自分の両親を見て心豊かに育つだろうか?
行動力ある青年なら、1%の人が見捨てられている社会に対して信頼感がもてるだろうか?
実際に見捨てられる1%になったとき、ナイフをもってトラックに乗り込み秋葉原に行く以外の幸せをみつけられるか?
実際に見捨てている99%になったとき、何の心配もなく秋葉原に行って楽しむことができるだろうか?
友達が見捨てられる1%になったとき、それは君自身の責任だと切り捨てることができるだろうか?
自分の子が見捨てられる1%になったとき、それは君自身の責任だと切り捨てることができるだろうか?
……
こういう『人間性』に根ざしていない「社会」論は、本当は無意味。
繰り返しますが、良く読めば分かる通り《結果の不平等》の発生を分裂君は認めている。それは「起こさないように頑張って起きてしまう」ではなく「社会が計画的に(貧困を)発生させる」ということで、そんな社会が我々の「人間性」に反していることもまた明らかである。
:::::::::::::::::::::::ツッコミここまで:::::::::::::::::::::::
まあ、ドラッカーが考える『仕事における人の「位置づけ」と「役割」の両方を満たすために組織の「マネジメント」がある』という話は普通に面白いので、「ドラッカーの仕事観」を推奨する分裂君はもっとそちらを丁寧に紹介して欲しいと思う。できれば偉大な経済学者E.シューマッハーの仕事観と併せて論じたりしてくれると面白い。また、『近代国家システム自体が1000万人を越えると機能しないのではないか』という指摘も大変面白いので、そのあたりを丁寧に研究してくれると読み応えがあって面白いのだけど、そうすると釣りにはならないんだろうな。
というわけで、お返事してみました。以上。
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080803/p1
あと、今日になって真面目に反論している人がいた。
↓このエントリーにびっくり http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20080803/p1 正直、ちょwおまwww消されるぞwwwwwと思った。 というのも、こういう事を言うやつは資本家の手先であって...
オンライン上で、fromdusktildawn氏のエントリを見て正面から、反論してくる組合の人はいるだろうか。 いないとすると、本当に日本の組合は終焉を迎えているとしか思えない。 http://anond...
個人的には「ボケにツッコミをいれる日本文化」を尊重したいなー。 何度もいうけと「健康ネタのハッタリはやばいって。」 相手するのめんどくさくなって存在自体忘れてたけど。 ま...
一つ追記。 ツッコミ出来る人はしといたほうがいいです。 でないとはてな自体が偽装サイトととらえかねません。 ちゃんとお笑いのポイントをついたツッコミ希望。
いろいろ思い出した。 ツッコミしたらトラバ拒否されたんだった。 だからはてながボケをほったらかしにする空気になったんだ。 ツッコミ不可。
タブーもなにもドラッガーが10年昔にいってたことをみんなにわかりやすいように書いてくれているだけじゃないの? そもそもなんで”労働”組合がここででてくるのか? 労働組合とい...