2008-06-30

【連載】小説ITゼネコン【第一回】

 「小説」など、大上段に構えてみたけれど、ドキュメンタリータッチフィクションエッセイを連載する。

俺の名は鈴木本太。すずきポンタ、もちろん仮名だ。これから出てくる人物、企業、団体、製品名等についても、架空のものであり、偶然現実の名と重なっていても他意があるわけじゃない。米合衆国オバマ氏と福井県小浜市とが関係ないのと同様だ。

 俺は32歳監査法人勤務だ。この業界ではイケてるほうじゃない。だって、システム監査を担当としているくらいだ。システム監査を低くみてるわけじゃない。俺の身長は・・、俺のことはどうでもいい。興味を持たないで欲しい。この話の主人公国産メインフレームコンピュータとそれを構成する企業レガシーシステムなんだ。俺は、狂言回しに過ぎない。「北斗の拳」の真の主人公は「北斗神拳とそれを中心としたヴァイオレンス」であったと記憶する。いや、主人公ラオウだっけ。まぁ、ラオウが倒れた後の「北斗の拳」が面白くないのと同様、俺の人生はたいして面白いものではない。

 今回の舞台はB銀行だ。俺たちのクライアント。TVドラマか何かの影響か、俺たち監査法人は、客先の不正を暴く行政官みたいな仕事振りをしていると誤解している友人もいる。あくまでクライアントお客様から対価をいただいて、仕事をさせてもらっているサービス業なのだ。だから、ぜんぜん、上から目線ではなく、普通の客商売だよ。俺は提供するサービスを売るセールスマンも兼任しているんだ。営業担当者はいないからね。そりゃ、エンド・ユーザにマイ・カーや呉服を販売する営業とは、少し趣きも違うだろうけど、お客様あっての商売。

 国税庁検察庁とは立場が全然違う。銀行の人と話をすると、やはり、国税検査官の中には、高圧的な態度の人もいるらしい。背中にしょっているのが、徴税だから調査権があるからね。でも、やたら、高圧的な人は新米検査官に多くて自信の無さの裏返しだろうとのこと。むしろ、しょぼくれたおやじさんが、ひょいと指摘をする事項の方が怖いそうだ。

 銀行をはじめとした金融機関には、金融庁検査というものがあって、そこからも検査官がやってくる。金融庁は、金融機関に対して、業務改善命令から、免許の取り消しにいたるまで、大きな処分裁量をもっているから、銀行にとっては大きな存在だ。貸出債権が適正に管理されているかを検査する資産検査官、事務が適正な手順に則って行われているか、不正がないかを調べる検査官など、担当も分かれているようだ。システムについても専門の検査官がいる。最近は大手銀行合併にともなうシステム統合で、おおきな障害が起きたことから、金融庁システム検査にも大きく目を尖らせている。

 ITガバナンスの適正さ(システムを運営する組織、規定が整っており、正しい手順に基づいて運営がされているか)や、個人情報の管理が十分か、データの参照権限や手続きについて適正な扱いをおこなっているかなど。これらが、金融庁によるシステム検査の調査ポイントの一端である。監査法人によるシステム監査とも重なる部分は多い。ただし、見る立場が違うので切り口は違う。俺らは、処分や免許・許認可が目的ではない。クライアントシステム運営が適正にされているか否かということを軸として、あくまでクライアント経営の適正さ、透明性に関する評価・助言を行っている。だから、コンサルティングマインドも必要だ。勿論、不正を隠匿したり、促したりする助言は駄目だ。

(つづく)↓第二回

http://anond.hatelabo.jp/20080701191148

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