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世界市場が人民元をいかように信用するのか、そのプロセスが明示されない
英米のホンネが見える。
中国は基軸通貨の「米ドルをやっつけろ」とばかり、今度は通貨バスケット導入を主唱している、と英紙『フィナンシャル・タイムズ』が報じた(22日付け)。
「やっつけろ」の箇所の原文は「knock off its perch」。
動きを整理してみよう。
三月に中国人民銀行総裁の周小川が、IMFを改革し、「SDRを通貨に」と主唱した。
この発言に欧米がたじろいだが、公の場で議論はおさえられた。しかしG20(ロンドン・サミット)のロビィでは、この中国の提案でもちきりだった。ガイトナー財務長官は狼狽した。
同じく中国人民銀行(日銀に相当)の胡暁煉・副総裁(女性)は「IMF改革のために『SDR債』を発行したらどうか」と提案した。
SDRは1969年に創設され、185ヶ国でクォータを分かち合っている。ロンドンサミットではIMF増資が決まり、日本1000億ドル、EU1000億ドル、中国400億ドルを拠金する。IMFの資本金は7500億ドルに増えた。
中国の外貨準備は1兆9540億ドルだが、このうち、7679億ドルが米国債権の保有である(三月末現在)。日本は6867億ドルだから中国が日本より多い。
ところが、中国のポートフォリオを観察したところ、外貨準備高の82%がドル建ての金融商品で、とくに長期債より短期債(なかでも財務省証券)にシフトしている(ウォールストリート・ジャーナル、5月22日付け)。
ドルを長期に保有する投資戦略が短期の債権、社債へ急激にシフトしていると言うのだ。
これを背景に「2010年にもGDPで中国が世界第2位になる」などと傲慢な自信が溢れだし、09年五月半ばに上海で開催された「陸角嘴フォーラム」のテーマは「上海をいかにして香港、ロンドン、NY並みに世界の金融センターにするか」だった。中国を代表するバンカーに中央政府からは周小川人民銀行総裁ら700名が出席したことは小誌でも述べた。
一年後に迫った「上海万博」に、米国館が出来るのかどうか、まだ定かではない。
嘗て朱容基首相は「箱ものばかりつくってどうするんだ」と嘆いたが、金融センターに必要なのは第一にNY証券取引所のようなコンピュータ管理の巨大システムである。
第二は規制緩和がなお必要なことである。
兪正声・共産党上海市委員会書記は「上海を国際金融センターとすることは、中国の金融分野を開拓するためでもあり、経済発展方式の変換と調和的な持続可能発展の実現のための選択でもある。上海にはすでに比較的整った金融市場システム・金融機構システム・金融業務システムがあり、国際金融センターの建設を加速するための良好な条件が備わっている」と獅子吼した。
周小川人民銀行総裁はこのことに深くは触れず「世界の金融危機は、G7の間で解決可能であり、中国はこの一連の動きの中で発言力を高めた」と述べるに留めた。
会場からは「中国は国際化のために人民元建てのボンドを発行し、世界に買わせろ」などと威勢の良い発言もあった(ウォールストリート・ジャーナル、5月18日付け)。
問題点を指摘したのは屠光紹・中国証券監査委員会副主任だった。
「金融センター化する鍵はなんといっても中央政府の権限になる規制緩和である。上海市政府と中央政府との政策のすりあわせがない限り、すぐに国際化することは無理があり、また上海市条例など、中央政府の政策改正にともなって地方政府レベルでの規制緩和が夥しい」と問題点を指摘した。
第三に必要なのは透明な情報、それを可能とするための言論の自由である。
言論の自由がない国では、マーケットは情報操作を受けやすく、決して国際的な取引が出来ない。
ところが上海市トップの愈正声は、金融国際化に一言だけ言及した後、次のようなインフラ整備に関して自慢げな報告をしただけに終わった。「上海南匯区を浦東新区に組み入れることを中国国務院がこのほど認可した。新たな浦東地区は国際的な金融センターと水運センターとして上海を建設するにあたっての機能集中エリアとなる」。
▲人民元がハードカレンシー化して、世界のシェアの3%だって?
「2020年までに世界の外貨準備の3%は人民元に」とする発言は上海銀行監査委員会副主任から飛び出した。
この目標は達成可能の数字ではある。
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米ドル 44・6% 44・8%
ユーロ 34・3% 35・3
ポンド 9・3 7・2
日本円 3・5 4・3
スイスフラン 1・9% 1・7%
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(出典 BIS報告)
この一覧を見ても、人民元はまだ世界通貨の片隅にも評価されておらず、国際決済に人民元を使う動きはない。
そこで中国は、正面切って「ドル基軸体制に代替する」などと豪語しながらも、じつは六カ国のの中央銀行と「通貨スワップ協定」を結んだが、総枠は950億ドルでしかない。
バーター貿易的な決済はベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、ミャンマーなどで行われており「人民元経済」を形成しているが、これらは率直に言ってアングラ経済の類いである。
そこで新手が繰り出される。中国はブラジルとの間に貳国間決済の導入を合意し、貿易を人民元とブラジルレアル通貨で決済し合うとした。
これらが背景にあって、「2020年までに世界での外貨準備の3%だ」と上海銀行監査委員会副主任の張光平が発言したわけだが、現実の数字を横目に「ドル、ユーロ、ポンドにつぐ日本円、スイスフランに追いつき、追い越し、同様に日本円も駆逐して、人民元が世界第四位の主要通貨となるだろう」と言い出したことを記憶に留めたいものである。
箱モノは出来た。インフラも整備された。しかし言論の自由はないままだ。
衝撃的な変化が連続している。
中国の外貨準備は1兆9540億ドルだが、このうち、7679億ドルが米国債権の保有であることが分かった(三月末現在)。ちなみに日本は6867億ドル、優に一千億ドル、中国が日本より多い。
これを背景に「2010年にもGDPで中国が世界第貳位になる」などと傲慢な自信が溢れる。
注目の経済フォーラムが上海で開催された。陸角嘴フォーラムという。
テーマは「上海をいかにして香港、ロンドン、NY並みに世界の金融センターにするか」。(この題名から東京が落ちていることに注意)。この討論のために中国を代表するバンカーに中央政府からは周小川人民銀行総裁ら700名が出席した。
嘗て朱容基首相は「箱ものばかりつくってどうするんだ」と嘆いたが、金融センターに必要なのは第一にNY証券取引所のようなコンピュータ管理の巨大システムである。
日本の森ビルが建設した「世界金融センター」ビルは101階建て、すでに昨年、上海の陸角嘴の一等地に鳴り物入りでオープンしたが、賑わうのは展望台だけで、入居したテナントはまだ45%程度。関係者は真っ青になっている。
しかも上海は、森ビルの隣にもうひとつ金融センタービルを建設する。
第二は規制緩和がなお必要なことである。
同フォーラムの席上、上海市をおさめる兪正声・共産党上海市委員会書記は「上海を国際金融センターとすることは、中国の金融分野を開拓するためでもあり、経済発展方式の変換と調和的な持続可能発展の実現のための選択でもある。上海にはすでに比較的整った金融市場システム・金融機構システム・金融業務システムがあり、国際金融センターの建設を加速するための良好な条件が備わっている」
などと獅子吼した。
ところが同フォーラムで周小川人民銀行総裁はこのことに深くは触れず「世界の金融危機は、G7の間で解決可能であり、中国はこの一連の動きの中で発言力を高めた」と述べるに留めた。
席上、会場からは「中国は国際化のために人民元建てのボンドを発行し、世界に買わせろ」などと威勢の良い発言もあった(ウォールストリート・ジャーナル、5月18日付け)。
問題点を指摘したのは屠光紹・中国証券監査委員会副主任だった。
「金融センター化する鍵はなんといっても中央政府の権限になる規制緩和である。上海市政府と中央政府との政策のすりあわせがない限り、すぐに国際化することは無理があり、また上海市条例など、中央政府の政策改正にともなって地方政府レベルでの規制緩和が夥しい」と問題点を指摘した。
第三に必要なのは透明な情報、それを可能とするための言論の自由である。
言論の自由がない国では、マーケットは情報操作を受けやすく、決して国際的な取引が出来ない。
上海では市場に必要不可欠の企業情報からしてインサイダー取引とデタラメな資産内容、虚偽に満ちた業績報告など、一から出直すべき状況の中で、貧弱な情報空間を放置したまま金融センター化を目ざすという剛気な姿勢は良いにせよ、基本的に矛盾なのである。
おりしもこのフォーラムと同じ日に、中央政府電子台(つまり国営放送)CCTVの会長が更迭された。
上海市トップの愈正声は、金融国際化に一言だけ言及した後、次のようなインフラ整備に関して自慢げな報告をした。
「上海南匯区を浦東新区に組み入れることを中国国務院がこのほど認可した。新たな浦東地区は国際的な金融センターと水運センターとして上海を建設するにあたっての機能集中エリアとなる」
また兪正声・上海市共産党委員会書記(兼中央政治局員)は、「国際金融危機という重要な時期に、国務院は、『現代サービス業と現代製造業の発展と国際金融センターと国際水運センターの建設の上海による加速推進に関する意見』を発表し、上海南匯区を浦東新区に組み入れることに同意した。この措置は、改革開放をいっそう推進し国家全体の競争力を向上させようとする中国の決心を示すだけでなく、上海経済の構造転換と長期的発展を促進するという戦略的な意義を持つ」と発言した。
つまり土建屋的発想のインフラ整備に関しての成果を自慢しただけで、言論の自由に触れていない事態が浮き彫りになった演説である。
上海市場の国際化、まだまだ道は遠い。