たとえば、たとえばなしというものがどんなにそのものの真を捉えていたとしても、それはどこまでいってもたとえばなしでしかないように、僕が語る君についての言葉も、どこまでいっても君そのものではないし、君には届かない。
君がいないということは、そういうことだ。
朝から汗ばむような日は、突然君から「会おうよ」って、連絡がくるような気がしてそわそわしてしまう。
今日は古着屋でTシャツでも探そうかなと思った日は「着なくなった服持ってきた」って君がいきなり訪ねてくる気がして家を出られない。
君に会いたくなったときは、いつかのように高円寺駅の喫煙所で君が待っていてくれているような気がして、つい立ち寄ってしまう。
君がいないということはそういうことだ。
あらゆることに君を感じるのに、ことごとく君がいない。
君がいないということは、そういうことだ。