■彼の中のfeminine/私の中のmasculine
彼は、手紙や手作りのお菓子を私にくれた。
私は彼の、少女のような部分が好きだった。
彼が好いてくれる私は、かっこよくてクールだった。
あの頃私たちは、男でも女でもない、ただの“私たち”だった。
月日が流れ、「男らしさ」「女らしさ」という価値観に染まり、私たちの関係は終わった。
その後の出会いはどれも、「女らしさ」を相手から求められるたびに窮屈に感じて、長続きしなかった。
彼が好きになってくれたかっこいい私は、今も私の中にいて、時々あの頃のことを“女々しく”思い出している。
ひとつだけ後悔していることがある。
彼と当て所なく歩いた夕暮れの帰り道、別れ際の彼の横顔に、そのままキスしてしまえばよかった。
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