俺は今、この世界のどこかにいる。それが誰にとってなのか、俺は知らない。魔王は、俺の知る勇者とは違う。
むしろ、勇者より魔王の方が遥かに強い。俺はいつもあの魔王に勝てるわけがない。――――勇者の魔王は、魔族に滅ぼされた。あの時、俺は、勇者に裏切られた。
魔王を救おうとした勇者は、魔王を斬り殺し、討ち滅ぼした。俺が魔族をやっとの思いで跳ね除け玉座にたどり着いた時、魔王は椅子から崩れ落ち、小さく蹲っていた。これ以上見ていられなかった。心臓に剣を突き立てる。
魔王は、俺の興奮した表情を見て、涙を流していた。俺の心が、詰まった。魔王が、俺に、ただ涙を流していた。
たとえ勇者が魔王に似せて作られた存在だとしても、魔王には俺にしか見えなかった。魔王は、俺に、ただ泣くことしかできなかった。
「......魔王、ごめん」
魔王は、俺を殺した。魔王は、魔王を殺した。魔王は、俺を殺した。魔王は、俺を殺した。俺は、魔王を殺した。
勇者は、魔王を殺した。俺を殺して、魔王を殺して。魔王は、俺を、魔王を殺して。俺は、俺を殺した。
俺を殺して、勇者を殺し――――勇者は、魔王を殺した。魔王は、俺を殺した。俺を殺して、魔王を殺して。俺は、俺を殺した。
俺は、俺を殺した勇者を殺した。俺は、俺を殺した勇者を殺した。俺を殺す、勇者を殺した。魔王が死んだ。魔王が、俺を殺した。
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