2020-01-07

席を譲るって難しい

 電車で座っていたら隣に空いた一席に父娘の親子連れが近づいてきた。父親は三歳くらいの娘を座らせると、中腰の姿勢のまま安っぽいリュックサックから袋をガサガサと取り出して小さな駄菓子を指先に挟んで娘に食べさせる。その間、娘は静かに行儀よく座っている。父親の貧相な立ち振る舞いを目の前にした僕はいたたまれなくなって席を立つ。

「いえいえ、結構ですよ」と父親は言ったが、「次で降りるんで」と僕はとっさに嘘をついてしまう。ドアの前に立ち父娘に背中を向けながら、なんて言えば次の電車が来るまでの十分間を無駄にせずに済んだのかなぁと思った。

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