「火事だー!」
「えっ……て、対岸の、しかもちょっと煙が出てるだけじゃねえか」
「火のない所に煙は立たないだろ?」
「だからってボヤ騒ぎを大火事みたいに言ったら、それは誇張だろ」
「でも、対岸のボヤ騒ぎに大騒ぎするの、好きだろ?」
「まあな」
「否定しないのか」
「ペンライトを指の間に挟んで複数持つことを『バルログ持ち』って言うらしいな」
「へえー、俺としては『ウルヴァリン持ち』のほうがしっくりくるけれども」
「骨格にシュウ酸ジフェニルでも流し込んでみるか?」
「バルログでいいよ」
「……ブリオッシュ!」
「びっくりしたあ。風邪か?」
「いや、誰かが噂しているのかも」
「言っちゃ悪いけど、お前のことで噂するような人間はいないだろ」
「それは俺の周りの人が噂をするような人格ではないって解釈すべき?」
「言っちゃ悪いけど、噂をするほどお前に関心のある人間がいないっていう意味合いかなあ」
「だったらクシャミと人の噂の相関は迷信だといってくれたほうがよかったな」
「そうか、気が利かなくて悪かったな」