労働を終え、1Kの風呂無しおんぼろアパートに帰ってきた。これまたおんぼろなファンヒーターのスイッチを入れ、スーツを脱ぎながらTVをつけると、嫌味な上司をギャフンと言わせてやったという内容の再現ドラマが流れていた。 「最近こういう下世話な番組多いなあ…」独りごちると、炬燵にあたっていた母が一言「ベッキーちゃん大変よね」 急に話題を振られて呆気に取られている俺を尻目に、風呂からあがってきた父と連れ立って夜の街へと繰り出していった。 「もしもし叔母さん?とうとう僕にも弟か妹ができるかもしれません」とだけ留守電に吹き込んで、銭湯を後にした。夜風が身にしみる。この時季の銭湯通いはしんどいけど、心は温かった。