「ホントにそれでいいの?お姉ちゃんはおっきいのにしたよ。お姉ちゃんみたいにおっきなのいらない?」
5歳か、6歳くらいだろうか。女の子が小さな弟に世話焼きそうに尋ねかけている。
弟の男の子は3歳か、4歳か。はっきり分からない。俺には分からないのかも知れない。じっと、黙っていて口を結んで、自分の考えを持っているように見えなくもない。
ぎゅぅっ。と、胸が痛くなる。
心の形が変わるのが分かるほど、直接にわしづかみにされた衝撃が走る。
姉さん。
違う。姉さんと俺はもっと年が離れている。そんな否定を思い浮かべてももう遅い。姉さん、そう、姉さんである、可哀想な姉さん、何も知らない姉さん。
かつて俺にも姉さんが、あんな風に話しかけてくる姉さんがいた。
今ごろでも生きているのだろうか、弟がどこにいるのか考えながら?
いや、「なぜ」だろう。
考えるとしたらそれだ。しかし…。
その弟にとって、姉は過去だ。一瞬、胸を締め付けるだけで、そこで終わる。