■嵐が去った。
まだ風はそよいでいる。
いささか酔いすぎていて、いささか煙草も吸いすぎている。
目を降ろすと、白黒の斑猫が濡れた道ばたに鼻をすって嵐の土産を探しながら、足取り軽くガード下を巡回している。
深夜だ。
風に怯えて徐行していた車両の連なり、その窓で、
ひとりひとりが座ってうなだれ、スマートフォンを弄んでいた東海道線も京浜東北線も、今は走らない。
どこかで空き缶の音がする。まだ、風にそれくらいの勢いは残っている。
明日、私には予定がない。明日から、が正しい表現か。
斑猫を愛おしく思えたことは、あと数日酒の肴にできる。
それをしあわせと言うつもりはない。趣ともいいたくない。
ただ、酒に酔うことの悦びの記憶。
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