2010-09-11

DocomoKDDIは、まともな人間をトップにすべきではないのか?

KDDIは、12月1日付けで同社の田中孝司専務社長に昇格し、小野寺社長会長社長職を退き、会長に専任するとプレスリリースを発表したという。

役員の異動について | 2010年 | KDDI株式会社

http://www.kddi.com/corporate/news_release/2010/0910a/index.html

守勢に回っているDocomoKDDI

近年、DocomoKDDISoftbankに対して守勢に回っているのは(印象的な部分は確かに大きいが)一定の事実だ。

その理由は、いくつかあるだろうが、決定的な理由はただ一つだと私は思う。それは両企業とも「トップが無能だ」ということだ。

そして、それは、日本企業全般に蔓延している病である。

社長の経歴を比較する

Docomo山田隆持社長KDDI小野寺社長Softbank孫正義社長の経歴を比較してみよう。

社長Docomo 山田隆持KDDI 小野寺Softbank 孫正義
年齢62歳(1948年生)62歳(1948年生)53歳(1957年生)
高卒資格獲得時年齢18歳18歳17歳(飛び級)
大卒資格獲得時年齢22歳22歳22歳
最終学歴工学修士工学経営学
留学経験なしなしあり(アメリカ)
起業経験なしなしあり(22歳)
経営陣参画時年齢53歳41歳22歳
その役職取締役設備部長取締役(詳細不明)社長
代表権取得時年齢59歳52歳22歳
その役職副社長副社長社長
経営経験9年間21年間31年間
代表経験3年間10年間31年間
語学能力日本語のみ日本語のみ日本語韓国語英語
経営は専門外の山田社長小野寺社長

山田社長小野寺社長とも、学生時代に専門で学んだのは工学である。とはいえ、エンジニア出身でいながら山田社長小野寺社長には、ケータイネットを使いこなしているという印象を世間にまったく与えていない。世間は、彼らに対して、下手をしたら「らくらくホン」「簡単ケータイ」のユーザーではないのかぐらいの疑いの目を向けているだろう。そんな彼らがケータイネット未来について何を語っても、世間が耳を傾けることはありえない。逆に、twitterで自ら情報を発信し、iPad仕事をこなすと公言し、テクノロジーに明るいという印象を世間に与えている孫社長の方こそが経営を専門に学んでいるのだ。

一回り老けているのに経営経験不足の山田社長小野寺社長

そして、年齢が一回り違う。山田社長小野寺社長は既に60代。孫社長はまだ50代前半だ。気力・体力は明らかに孫社長に分がある。

では、10歳年上な分だけ、経営経験豊富かといえば、そうではない。山田社長小野寺社長エンジニアとして使い物にならなくなった40代、50代になってから、経営陣の下っ端に加わって経営を学び始めたにすぎない。経営経験は、20代から社長を務めた孫社長の方が遙かに豊かなのだ。

その後、代表権を得るまでの10年、20年の間、山田社長小野寺社長は、オンジョブトレーニングで、どのような経営を学んだというのだろうか。会議で周囲の顔色を見ながら当たり障りのない意見を言い、取引先とゴルフに興じたぐらいのことは最低限やったかもしれない。まぁ、同情の余地はある。今、クビになったら次の就職口が無いかもと不安背中合わせの中年にできることは、その程度でしかない。ただ、その学びの内容は、20代で起業した孫社長のそれよりどの程度実践的だったのだろうか。

語学能力が欠如している山田社長小野寺社長

当然のことながら、山田社長小野寺社長には、語学を専門で学んだ形跡も見られない。アメリカへの留学経験があり、少なくとも大学卒業程度の英語を読み・書き・聞き・話すことのできる孫社長に大きく見劣りする。携帯電話国内市場が飽和する現在、打開の糸口を海外に求めなければならないが、山田社長小野寺社長は、トップとして、どのように情報を集め、判断し、そして行動ができるのだろうか。

世界経営者と親交を結ぶという発想すらない山田社長小野寺社長

下っ端が翻訳などでお膳立てしてくれるのを辛抱強く待ち、ハンコがたくさん押される過程でスポイルされた情報を紙背からくみ取り、失言・減点を怖れて誰も発言しない経営会議に流れる空気を読んで判断するのは、非常に高度な能力が求められるものだ。山田社長小野寺社長は、そういう意味で、日本でも(いや、世界でも)有数の能力をお持ちだろうと思う。

ただ、その能力は、ルパード・マードック(世界メディア王)、スティーブ・ジョブスアップル創業者)、ジェリー・ヤン(ヤフー創業者米国留学経験あり)、ジャック・マー(アリババ創業者中国にて英語講師経験あり)といった世界有数の企業経営者と個人的親交を結ぶようなことには、やろうと思っても役に立たない。思いつきすらしないだろう。

DocomoKDDIのトップは無能

改めて繰り返そう。

DocomoKDDIは、経営素人をトップにしており、山田社長小野寺社長経営者としての資質は、孫社長比較して劣等だ、ということだ。

これだけ明白なのに、株主たちはよく我慢している。逆に言えば、株主が良いといっているのだから、外野があれこれこれ言うことではなく、これで良いのかもしれない。

日本企業蔓延する病

一方、「トップが経営素人で、経営者として無能」というのは、多くの日本企業蔓延している病だ。周りの会社もみんな似たような状況で、また注目度が低くて携帯電話会社のように、比較されにくいために目立たないだけだ。業績が右肩上がりだった時代は、ごまかせたが、これからは、そうはいかなくなるだろう。

処方箋

危機に置かれている会社の、自分は無能だと自覚がある経営者は、即座に辞めるのが最良の処方箋だ。その際、必要なのは、ただ、年次・順送り人事の慣行を止め、無能な年寄りどもを道連れにするということだ。

一般的な日本企業では、通常はこうしている。

係長の中から優秀なものを課長に、課長の中から優秀なものを部長に、部長の中から優秀なものを取締役に、取締役の中から優秀なものを副社長に、自分会長になったときに初めて副社長社長に。

こんなことでは、本当に優秀な者をタイミングよく社長に就けることができない。経営トップとは、頭は固くなり、肉体はガタが来た年寄りの座るべき場所ではないはずだ。

優秀な人間をトップにつけるのに、もっとも効果がある劇薬はこうだ。

広く社会から経営陣を集めて、その中から、とびきり優秀な者を社長に就ける。

中間は、抜擢人事だ。

係長以下一般社員の中から優秀なものを課長に、課長以下一般社員の中から優秀なものを部長に、部長以下一般社員の中から優秀なものを取締役に。ただ、一般社員取締役では、魚とイルカぐらい似て非なるものだというのが、この場合の問題ではある。

経営トップが備えるべき基本的な能力

いずれにしても、何をもって優秀とするか、その判断基準と、目利きの能力が問われる。また、決断力や、反対を押し切る実行力も求められる。とはいえ、それは、本来、経営トップとして備えてなければならない能力の基本中の基本のはずだ。そして、孫社長という基準があるのだから、話は早い。孫社長と同程度優秀か、あるいは、それ以上優秀な人間をトップに据えればいいだけのことである。それは不可能なことか? じゃあ、孫社長日本一世界一経営者なのか? DocomoKDDIもこのまま孫社長に切り崩されるにまかせるだけか? 残された最後の切り札、監督官庁からの天下りを使って、政治家やお役人らとゴニョゴニョする以外に打つ手はないのか? あぁ、いや、これは、別に最後の切り札でもなんでもなかった。

最後

ともあれ、DocomoKDDI企業としての未来が輝かしいものでありますように。

日本中の経営者の方々のますますのご活躍をお祈りしております。

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