今年も4月官庁訪問の季節がやってきたから、ふと書きたくなった。
俺は大学卒業後、非正規の職をいくつか回ってきたが、御多分に洩れず不景気で仕事が苦しくなってきた。このままでは未来がないと一念発起して、公務員試験の勉強をして国家公務員1種試験に合格した。試験そのものはとてもフェアな試験で俺でも合格することはできた。
ところで
“35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか
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という本が出ているが、俺はまさにそういう位置にいる。負け組だとかダメ人間だとか散々言われてきたけど、その通りだと思う。だからこのエントリも「ダメ人間が分不相応な夢を見ているんじゃねーよm9(^Д^)ぷぎゃー」と思われるだろうが、それでも書いてみたい。
さきほど書いたように1種試験は非常にフェアな試験だった。1次試験は教養と専門のマークシートで、これは一定の勉強をすれば通る。次に専門の記述があるが、これも勉強すればよいので問題はない。少し不透明なのは総合試験と呼ばれる論文試験だが、これも採点基準は民間基準から言うと非常にクリアだった。
採用試験試験方法に規定する総合試験採点基準は、次のとおりとする。
1 採点方法
(1)採点は、各答案ごとに2名の採点者が行う。
(2)採点者は、独立して、別紙1に掲げる「評価の観点」及び別紙2に掲げる「採点における評価とその点数」にもとづき、1点から5点までの1点きざみの5段階によって行う。
(3)採点者のうち一方のみが1点の採点を行った答案については、調整採点者が別紙3に掲げる「調整採点における評定とその段階」に基づき、A、B、Cの3段階で評定を行う。
2 粗点の算出方法
答案の粗点は次により算出する。
(1)調整採点者による評定を行わなかった答案
2名の採点者の点数の和
(2)調整採点者による評定を行った答案
1 評定の段階がAのとき
2名の採点者のうち、高い方の点数の2倍
2 評定の段階がBのとき
2名の採点者の点数の和
3 評定の段階がCのとき
2名の採点者の点数のうち、低い方の点数の2倍(2点)
以上
評価の観点
総合試験の採点は、答案の全体から受験者の判断力、思考力等を総合的に評価して行い、その際、特に次のような観点に留意するものとする。
1 問題の理解
○ 出題の趣旨を正しく理解し、設問に沿った解答を行っているか。
○ 出題に関連する基礎知識及び問題意識を有しているか。
2 思考・判断
○ 問題を深く掘り下げて論じているか。
○ 既存の知識や情報を論述するだけでなく、自らの思考に基づいた意見を述べているか。
○ 適切な判断・結論を下しているか。
3 構成
○ 論理に矛盾や飛躍がなく、論旨が明確になっているか。
○ 全体として適切な構成になっているか。
4 文章
○ 文章に説得力があり、論文として格調を備えているか。
○ 正しい用字、用語で書かれているか。
採点における評価とその点数
5点 特に優れている
4点 平均よりも明らかに良い
3点 平均的
2点 平均よりも明らかに劣る
1点 合格に値しない
このような基準で採点された上で、最後に成績も開示される。面接試験も同様だった。ともあれ、俺は公務員試験には好印象を持ったし、それなりの成績で合格することはできた。
それから各種セミナーに通って現役の職員にできるだけ多く接した。そのときは省庁の選考は民間企業と違って新卒主義もないし、能力とか熱意があれば通ると言われた。現に接した職員の中には既卒になってから1種試験を受けて採用された人もいた。バカな俺はそれで希望を持ってしまった。何事にも物事には限度はある。俺は4月1日現在33歳なんだ。
散々な結果だった。噂では省庁の採用は非常に恣意的だと聞いていたが、まさにその通りだったと思う。ネットには東大じゃないと通らないとか、東大でも法学部で現役合格以外は2軍扱いだとか色々書いてあるが、アホな俺は今までの試験やセミナーですっかり心酔していた。さすがに今は東大じゃないとダメだとか、親が官僚じゃないとダメだとかはないらしいけど、それでも俺の夢を粉々に砕くには十分だった。
官庁訪問は省庁によって異なるだろうが、だいたい次のようなプロセスを繰り返すらしい。
原課面接とは、職員の空き時間を使って職場に行き話を聞くことを指すそうだ。面接というよりは業務説明に近いらしいが、次の個別面接では原課面接で聞いたことを掘り下げて聞かれる。だから、限られた時間でどういう仕事をしているのか、何が問題で何を目的として取り組んでいるのかということを聞き出して理解しなければならない。ここでの理解が甘いと個別面接の評価が下がる。
ところが、俺は原課面接は一度も経験したことがない。省庁を訪問して手続きを済ませると1回か多くて2回の個別面接だけをして、結果を人事(秘書課というそうだ)に伝えることもなく、人事は遠回しに不合格を伝えてきた。面接官と人事が接触したようにも見えないので、面接の結果不合格になったわけでもないような気がする。原課面接もしていないから掘り下げたことを聞かれたわけでもない。官庁訪問ブログを読めばわかるが、官庁訪問は長期戦で朝から深夜まで拘束されることはざらにある。さっさと追い返された人は不合格ということだ。また、帰り際に「何かあればこちらからご連絡します」も死亡フラグ。普通の人は「次は○日の○時に来て下さい」と次回の予約をする。
初日で落とされてしまったので翌日からは別省庁を回るけれど、結果は同じ。いくら頭の中がお花畑の俺でもわかる。俺は選考外だったのだ。官庁訪問では内定者は20人くらいと面接するそうだ。単純に割り算をすると初日から5人くらいは会うのが普通。実際、訪問シートのチェック欄には面接官5人分の欄がある。普通ならその面接官の意見をすりあわせて評価を決めるのだが、人事(秘書課)の人の死刑宣告がすぐに来たし、面接結果を見るまでもなく不合格だったのだと思う。
こうして俺の淡い夢は消えた。今の学生は将来に対する不安を持っているのだろうが、俺はその未来を実体験として味わってきた。こういう状況は変えていかないといけないという熱意は本物だ。単に公務員の安定した身分が欲しいとかそんな志望動機じゃない。能力は普通に大卒後10年正規雇用で働いている人よりは劣るだろうが、全く何もしてこなかったわけでもない。だから、せめて面接官が面接結果を協議した上で、あいつは年齢相応の能力がないからポテンシャルのある新卒を採ろうと結論づけたのならまだ納得がいくが、このような切られ方は正直ショックだった。
公務員試験の性質上、公平性をアピールするのは仕方ないと思うけれど、ちまたでの噂のように実態は強固なエリート主義であるのならそう言って欲しかった。せめて、個人的に話をしているときくらいは、君は選外だから来ても時間の無駄だよと言ってくれれば早めにあきらめが付いた。
各省庁も同じこと思ってるんじゃないの? 「へんなの受からせるなよー手間かかんだろー」って
俺は8年前に官庁訪問をした身だけど、話の内容に違和感があるし、まともに官庁訪問をしたようには読めないんだが。社会人受験の割には、学生よりもお粗末なことをしてないか?
難関と評判の国家公務員試験I種(国I)を受験してみたのでそのときの体験記のようなもの。 誰だか分かる人もいるかもしれないけど黙っててね。 基本的な情報 区分: 理工I 試験勉...