方針を示してしまうと、それに沿った予算を削れなくなるから、方針を示さずに出させて、それにケチをつけるつもりなのであろう。万年野党だったせいか、言いがかりをつけることしかやれないようである。
方針が示されていないのだから予算案を組めないとし、古い予算案を出し、国会を通らなければ暫定予算で参議院選挙まで引っ張るという展開もありえるだろう。
外為市場に介入しないと言ったと思ったら、介入するかもしれないと言い直したりで、言論に信を置けない連中ばかりという事で、順調に不興を買っているようだが、ここで、天下り禁止の為に早期勧奨退職禁止を言い始めた。
天下りが問題なのは、実業の世界では役に立たない人でも同期から一人だけを残す為に、官界から出さなければならないという慣例の為と言える。そういう人の為に、行政の下請けとなって意味の無い仕事をする団体を作ったり、天下りの人件費分を上乗せした随意契約が行われたり、その事業の売り上げでは到底賄いきれないような高額の人件費を出していて、恒常的に赤字で運営交付金という名目で税金を注ぎ込んでいたりする事業が作られている。
天下りした人に支払われる報酬は、公務員の人件費ではないという事で、総人件費の水増しが行われているのである。しかも、年金事業のように、実際にお金を扱う仕事に手を出してしまって、人員と設備投資が雪だるま式に増えていって、しかも破綻状態という間抜けな結果になってしまっているのもある。
無駄を省くのに天下り先を無くすというのは、筋が通っているように見えるが、どの天下り先を無くし、どの天下り先を残すのかという基準が、明示されていない。すべての天下り先をという話になると、天下り先として目の敵にされている独立行政法人というくくりの中には、国立大学も含まれていたりするのであった。官僚に削減を命じると、公海や領土権の及ばない宇宙における活動や公教育といった、国家がやらなければならない事業を削減し、自分の将来の天下り先となる、仕事が楽で報酬が大きい仕事は残すという事になる。
本当に優秀な人ならば、随意契約による持参金が無くても、省庁の後ろ盾が無くても、利益を上げられる筈であろう。使えない人を、使える人にするには、修羅場に放り込んで経験させるしかない。行政の中では、修羅場に出て行く事はないし、終身雇用では、失敗する可能性のある修羅場に行っても、何のメリットも無い。成功すれば、他の人を押しのけて昇進する事になって恨みを買うし、失敗すれば出世の望みを絶たれる。成功して当然、失敗したら損ばかりというのでは、責任回避のエキスパートだけが生き残る事になるのである。
一度就職したら、定年までそこに勤め続けるというスタイルは、企業間・組織間の競争が激しい状態でなければ、意味が無い。競争を管理してしまうルールが強い状態では、競争が発生しないのだから、労働者を減らす合理化によってでしか、利益が発生しなくなる。無能な人員を抱え込んでしまって、しかも、人減らしが出来ない組織となっている状態は、結果としてそうなっているのであって、そこを問題視して手を入れても、外部環境が変わらなければ、意味が無いのであった。
天下り先を潰す事で、高額な報酬や渡りで発生する退職金を無くしてその分をばら撒きの予算に使うつもりなのであろう。
競争を発生させ、企業や組織に新陳代謝を発生させるように、ルールを変えていく事が、迂遠なように見えて一番早い国家・社会の建て直し策となるのだが、官僚機構をただ敵に回すだけの改革で、何が出来るつもりなのであろうか。
[2009.9.30]