2024-04-10

親切なんてするもんじゃない

通勤電車で座ってたら目の前に杖ついた婆さんがいたから席を譲ろうと声をかけた。

すると婆さんは「いいのいいの大丈夫から仕事に行くから」と言って断った。

断られた恥ずかしさに俺は「そうですか」と答えて俯くしかなかった。

婆さんは俺の気持ちを知ってか知らずか「この時間は混むんですね」「昨日は娘のところに泊まったのよ」などと俺に話しかけてきた。

かなりめんどうだったが「そうなんですね」などと適当に相槌を打った。

しばらくして、俺の隣に座っていた金髪若い男がスマホから顔を上げ何かに気づいたようにイヤホンを外した。

で、杖の婆さんの腕に触れて「どうぞ」と立ち上がった。

婆さんはまた「いいのいいの」と言ったが、金髪の男はもう席に座る様子はない。

金髪の男が無理やり立ち上がったことで、座席の前に立っている乗客が押されて迷惑そうに顔を歪めている。

婆さんは諦めて俺の隣に座った。

俺に言われたら断るのにイケメン若い男に譲られたら座るのかと、俺はなんともみじめな気持ちになった。

そして婆さんは「どこまで乗るんですか」」「もう80歳になるのよ」」「毎年旅行に行っているがこの年になると年に一度しか行けない」という話を延々と続け、俺はうぜぇババア知らねえよそんな話と思いながら優しく頷き続けることになった。

会社の最寄につき、ようやくババアから解放されたと俺に「お疲れ様です。優しいんですね」と声をかけられた。

さきほどの金髪の男だった。奴が俺のストーカーだということがわかるのは数日後のことである

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