2009-07-03

動き出した。

まさかと思われるほどにスピーディである。

7月1日、IMF理事会は設立以来60年で初めとなるIMF債券をSDR建てで発行することを正式決定した。従来、日米英ならびにEU加盟国からの融資依存した資金調達手段の多様化が走りだす。

 

この舞台裏では英米の妥協がある。

第一はIMF中国との先鋭的対立が急速に和解した。ウォールストリートジャーナル中国語版(華爾街新聞、7月2日)に拠れば、かねて対立していた両者の関係IMF側が折れて、中国の四月の経済成長率を6・5%から7・5%に嵩上げしたことで突如の和解となった。

 

第二に09年六月、ロシアのエカテリンブルグにおけるBRICs会議の合意をふまえ、中国ブラジルロシアインドが700億ドル(約6兆7000億円)分を購入する方針が示されてIMF理事会を揺さぶっていた。

 

第三にIMFの英米主導が終わる流れの始まりを英米が認めた。

IMFの主導権の一部をBRICs諸国にも明け渡した歴史ターニングポイントとして記憶するべきかも知れない。

これからIMFが発行する債券は、合成通貨の「SDR」建て。つまり実際の通貨ではなく概念上の人工通貨米ドルユーロ日本円英国ポンドの四つのバスケット中国はこのバスケットスイス・フランと人民元を参入させようとしている)。

▲周小川、王岐山らの動きは揺さぶりではなく、ホンネだった

新規SDR債券は最長で5年。加盟国と中央銀行の間で売買が認められ、将来は債権マーケット流動性も生じる可能性がある。

SDR債権は三月に王岐山副首相が主唱し始め、ロンドンのG20サミット直前には周小川中国人銀行総裁がSDR通貨発行を突如言い始めて日米欧をすっかり慌てさせたが、いまから考えればこれらは政治伏線だったのだ(詳しくは拙著人民元ドルを駆逐する』に詳述)。

中国ロシアブラジルインドBRICs四カ国が国際準備通貨としてのSDRに着目し、SDR債発行に合意したのは中国の主導、ロシアの追認が大きく、ドル基軸通貨というIMF体制の根本を揺らす目的がある。

人民元ハードカレンシー化への動き、これから加速するだろう。

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