2009-06-06

この国の科学を崩壊させる最も簡単な方法:学振DC1の結果が今頃返ってくるようにする

この国の科学を崩壊させる最も簡単な方法を教えよう。それは、学振DC1の結果が今、5月下旬~6月頭ごろに帰ってくるようにすることだ。大多数の人には何を言っているのかわからないと思うので、ちゃんと説明する。

まず、大学4年間の後に進む大学院というのは、修士課程2年間と博士課程3年間に分かれている。理系だと、基本的には修士課程2年間まで出て企業就職するのが一般的だ。修士課程学生博士課程に進学したい人は、博士課程3年間の学費&生活費を、どうやって捻出するかが、当然、悩みどころになる。学振DC1というのは、その3年間、毎年、200万円の給料と50万円程度の研究費がもらえる制度で、要するに、「お前は学費や生活費の心配はしなくていいようにしてやるから好きに研究しろ」という制度である。毎年、申請者の10%~20%程度しか学振DC1は取れない。

さて、そうなると、修士課程学生としては「学振DC1にとりあえず出して、だめだったら就職」というのが出来ると一番嬉しい。ところが、実は、これが事実上できないようになっているのだ。なぜか?学振DC1の結果が返ってくるのは修士課程2年生の11月修士課程2年生の11月から就職活動なんか出来るわけがない上に、博士課程進学のための入試はほとんど修士課程2年生の8月に行われるので、11月には、もう進学するか就職するかが完全に決まっている状態になっている。「だめだったら就職」というのは無理で、学振DC1に申請する5月下旬の時点で、博士課程に進学するのは事実上決定、という制度になっているのだ。

もし、学振DC1がずっと早くに申請して、今頃(5月下旬~6月ごろ)に結果が返ってくる制度だったらどうか?つまり、「学振に通らなかったら就職」することが出来たらどうなるか?毎年、学振に通らない申請者の8~9割のうち、大半は、「通らなかったら就職」を実際に行って、博士課程に進学しないだろう。博士課程進学者が半減してもおかしくない。

博士課程進学者が半減する」というのは、博士課程の悪い就職率を考えると、一見プラスに見えるかもしれないが、実際にそういう事態になった場合、人員不足で研究活動が継続できなくなる大学研究室が多数出てくるのは確かだ。それは、日本科学カバーできる分野を狭め、多くの分野で日本出遅れることを意味する。日本大学価値も下がり、優秀な人は、大学卒業後にアメリカ大学に行って研究するようになる。頭脳流出の始まりだ。

学振DC1の結果がいつ返ってくるか~そんな一見些細に見えることが、事実上、この国の科学を支えている。

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