2007-11-29

[]http://anond.hatelabo.jp/20071129223804

しかし、疾走感こそ命。

「私は貴方様に身と心を捧げる者だと申しあげました」

「…うん」

正面切って言われると、たじろぐような言葉だ。なんというか、女性から言われるか?こんなの。

「ですから、このような選択を強いるのは私にも辛いことです。」

「ごめん」

「そのお優しさが、きっと勇者の証。」

にっこりと微笑んだ。

「もし、貴方様の世界をその手で壊すのなら、一つお願いがあります。」

「何?」

「上位の世界に帰ったら、本を書いてください」

「本……世界のこと?…虚構を書けって言うんだね」

「はい。」

ファンタジーを」

「はい。」

「君の世界を。」

「はい。願わくば、私が貴方様の傍でともに戦える物語を」

「僕なんかに本が」

貴方は特別なお方だと申し上げました」

ほんの少しいたずらっぽく笑った。

「じゃぁ」

少し、居心地が悪かった。自分が女性にこんなキザなせりふを吐ける人間だとはおもわなかった。

「君がヒロイン小説を書くよ。」

彼女が少し顔を赤らめて微笑んだ。

ありがとうございます。」

「名前は?」

ヒロコ」

「わかったよ。君の国の話を、僕とヒロコがともに戦う話を書くよ。でも」

「『でも』はありません。」

きっとした表情に戻ったヒロコが突然言い放った。

勇者様におかれましては、われ等の国に来てくださることかなわぬとのこと。さすれば、使命として下級魔法使いヒロコ、この世ばを打ち滅ぼし、勇者様には思い残すことなくわれらが祖国降臨いただくのみ。」

ああ、始まったのだ。そして終わるのだと思った。この辛かった38年間が。素っ頓狂な1時間が、まるで幻のようじゃないか。一通りの口上を終えたヒロコがほんの少し首をかしげて小さな微笑を浮かべた。(これから破滅の呪文を唱えるのだ)ごく自然にそう分かった。

僕がやることは決まっていた。さよならヒロコ。さよなら、辛かった38年間。ヒロコが呪文の最初の音を出す為に唇を動かしたその瞬間、僕はこの世にあるはずのない、一度も聞いたことのない、読んだこともないその言葉を唱えた



増田!」

  • 「お願いです。考えてみてください。この世界では夢も希望もないあなたが、妖魔の世界では勇者さまになれるのですよ」 「おい、ひどい言い方だな。」 「この世で勇者さまになれる...

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