実家に帰ったら墓が無くなった。
いつものように家紋が刻まれた墓石があるはずの場所に行くと、そこは更地になっていた。
後ろから声が聞こえる。
「おじいさん、今度はこっちに入った」
見ると、何人もの名前が刻まれた廟がある。
「マンションの表札みてえだな」と独り言つ。
共同の永代供養塔に入れ替えたらしい。
まだ爺の名前は刻まれておらず、廟の脇に見慣れた墓誌がある。
「私が死んだら、一緒に名前を入れてもらうから」
引き抜かれた墓誌についた土が生々しい。
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