近所に森林公園がある。
そこに、ふらっと行ってきた。
森林なので涼しくて、歩いていれば蝉の声が聞こえた。
蝉の声はひとつだけで、急に鳴き始めては、ずっと鳴いていた。
ミンミンミンミン。
ミンミンミンミンミンミンミンミン。
ミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミン。
昨夜、夢を見た。奇妙な夢だった。
音はなくて、周りは暗くて、でも遠くの星の輝きで真っ暗じゃなかった。
でも一人きりだった。ほかに、何もなかった。
私は漂い続けた。
蝉は鳴き続けていた。
もう夏は終わるのに。
蝉は鳴き続けていた。
仲間の存在を探すように。
蝉は鳴き続けていた。
自分はここに居るのだと、誰かに気づいてもらおうとするように。
快い風が私をあてがい、私は歩みを再開させた。
私も、蝉なのかもしれない。あの蝉のような。
だから私は、きっとここで鳴くのだ。