■私はある日、ふと気付いてしまった
私が好きなのは猫ではなく、猫と呼べる概念なのではないか?ということに。
もふもふの毛、しなやかで柔らかい身体、愛らしい大きな目にωのような口、ピンと張った幾本もの髭、うぶ毛の生えた小丘みたいな耳、肉球、ニャアという鳴き声。
私はそれらに惹かれ、猫ではなく猫の概念を愛していたのかもしれない。
……と、そう考えていたところで私の膝の上、猫がゴロゴロと喉を鳴らして顔を拭き始める。
その様子を眺め、心の中の杞憂は漣のように過ぎ去っていった。
空は青青としており潮騒は姦しい。猫とは、そういうものなのだ。
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