愛読書を売るのは過去を捨て去る行為に似ている。世間ではこれを断捨離と呼ぶらしい。
麻紐で雁字搦めにされた書物の山。紐解かなければ物語はもう誰の目に触れる事もない。燃やせば、その分のスペースが出来る。人生と同じで、誰かが消えればそこに誰かが入り込む余地が生まれる。私が愛したのは埃に塗れた、小汚い書籍達。私と共に歩んだ書籍達。今はもう心躍らせる事はない、二度と思い出す機会はない、そう思い込みたかった。
書物の色鮮やかさは何度もノスタルジアに私を捉えて離さない。捨てて進むも、抱えて進むも同じ事。一度触れてしまえばその記憶は捨てる事が出来ない。
Permalink | 記事への反応(0) | 14:23
ツイートシェア