■棒論 辻征夫
道に木の棒が
落ちていたので胸が痛んだ
木の棒が もし
窓とか
箪笥とかの製造過程で
(きみとはおわかれ!)
不要部分として
捨てられたものだとすれば
棒にも 棒の
過去があり
それはいまも 透明な
陽のあたる窓とか
幸福な
暗い部屋の箪笥
などのかたちで
棒を忘れて存在する
窓と箪笥が
どこかに
存在するわけだと思ったからだ
そして思いが ぼくの
行方不明の窓と
箪笥に到ると
ぼくの混沌の
藪から鋭く
突きでるものがあってぼくを撃つ
道に木の棒が
落ちていたので瘤もできた
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