2008-12-15

「ただ働き」が何を生みだすか、知らないで良いワケがない

最初に三行でまとめとく。

「ただ働き」は【ダンピング】であり、これを推奨するのは狂気の沙汰。

よって【ダンピング】推奨する釣りエントリマジレスは不可(dankogaiは除く)。

つーかIT関係奴隷労働者はこの手の糞エントリに石投げて、さっさと家帰れ。

なんでそうなるのか興味を持った人は、以下を読んで欲しい。

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糞学生はザマー。こんな人材はいらない。

という釣りエントリに対して、id:dankogai

「タダで働きます!」? 30年または$300万早いわ雑魚

…とギャグ含みで返したまでは面白かったが、なんだか

「ただ働き」は三文の得

みたいな「あれ?マジレスなの?マジで?」みたいなエントリを返す人が現れ始めたのでヒトコト言っとく。

資本力のある会社が、通常あり得ない安値商品を売る、それが【ダンピング】。

ダンピング】の目的は、それによって競合他社からシェアを奪うことだ。

ダンピング合戦のせいで市場から売り手が減り、自社のシェアが増えれば、その後ゆっくりと利益を回収にかかる……これは「資本力」という競争体力のある者にとって一番確実な競争勝利への道だ。だがそれは市場利益には反する。だから一般に【ダンピング】は競争の妨害であり市場原理に反する行為だと認められている。日本でも「独占禁止法」に基づく、公正取引委員会の「一般指定6項」の定める不当廉売の禁止に【ダンピング】が定義されている。

ここで改めて『一般に労働者というのは自己労働力を販売する商人である』というシンプル原理を持ち出すのも恥ずかしいが、労働者の得る対価(すなわち給与)もまた、労働力市場の中で【ダンピング】を行う人間がいれば当然ながら影響を受ける。ありていに言えば不当に安くなる。上の論者たち二人が言っているのは(ネタで言っているdankogaiは除く)「若いときの苦労は買ってでもしろ」という古くさい格言であり、古いとはいえなるほどそれは真実であり美徳であるとは思うが、ただしそれが労働力市場に与える影響というのは決して無視できない。この点に関しては単純に「自由競争うめぇ自己責任自己責任。」で放置するワケにはいかない。つまりIT関係奴隷のように働かされてる皆さんは、一体なぜ自分たちが奴隷のように働かなければならないか少し考えた方が良いということだ。

悪気があったにせよなかったにせよ、この手の【ダンピング】を行ってきた人々のせいで、労働力市場は不当に廉(やす)く抑えられ、労働環境改善されないまま、そして今日の状況を迎えているのではないだろうか。彼らによる【ダンピング】圧力に負けて競争から降りざるを得なかった人たちの中には、身体を壊して田舎に帰った優秀なプログラマ世界に通じる才能アイデアを持っているのに生活が立ち行かなくなって消えていったエンジニアたちがいたのではないか。そうして、有り余るマッチョな体力を武器にそういった人々を駆逐して労働力市場シェアを独占した彼らのために、現在労働力市場とそれに関わる売り手(すなわち労働者のみなさん)それから消費者である我々は、ものすごい不利益をこうむっている可能性があるのではないだろうか?上のエントリを書いた人々にその自覚はあるのだろうか(少なくともdankogaiは分かってやってると思う)。

そして、今日サービス残業を繰り返す皆さん(というか、自分自身がそうなので自戒を込めて言う)が知っておくべきなのは、自分たちの行為もまた【ダンピング】なのだということであり、そういった不公正な競争のせいで、給与は上がらず、誰かの健康は損なわれ、市場の調整機能は不全を起こし、そして世界は少し不幸になっているということだ。上に上げた【ダンピング】の定義の中にもこう書かれている。

不当に商品又は役務を低い対価で供給する行為

不当に安い対価(給与)で役務を供給する(働く)ことは【ダンピング】なのだ。

だから本当の所、彼らが書くべきエントリは、反省の意を込めて「自分たちは生きるのに必死だったから【ダンピング】した。でもそれは間違っている。」でなければならないし、それをしない時点で、彼らは二重に罪深い。ほんとうにヒドい。(繰り返すが、この話を「タダ働きは金持ち趣味だぜヒャッッホーイ」的なギャグに落とし込んだdankogaiは、その意味多分自分の罪深さを十分『分かって』いる。)

そして一昨日も昨日も仕事をしていた自分もまた、その罪深さをどこかで償う必要があるだろう。

こんなエントリ増田に放流するのはそのためだ。

若い労働者よ、そして現在正社員たちよ、「日本経済がこんな時代だから」「自社の経営がこんなんだから」云々の言葉で、責任感に満ちて休出サビ残に甘んじる皆さんの努力は、残念ながら日本を救うことにはならないし、自分を含めた労働者未来を暗黒に閉ざす行為だと気づいて欲しい。

プロの自覚があるならば、明るい未来を目指すなら、決して『ただ働き』してはいけない。

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