2008-09-16

戦場心の傷 NHKスペシャル   

ちょうど渡辺靖の『アメリカンセンター』を読了したので、アメリカ関連ということで観た。

イラク戦争派遣された兵士たちが帰還後PTSDに苦しみながら暮らす生活を追う二夜連続ドキュメンタリー

泥沼化したベトナム戦争は、最終的にソ連崩壊というアメリカ側の勝利と見なす(にはあまりに重い代償は多いが)決着は、現在アメリカアメリカたらしめるエクスキューズを与えてしまったという点において、未だ良策に導けない他の先進国責任はあまりある。

過ちを犯しても、「あのときは、そうするしかなかった。」「どうしようもなかった。」と自らの否を認めつつも根底では自分も被害者なのだという居直りタイプ人間でもないかぎり兵士には向かない。

約2億五千万もかけ、イラクを模したハリウッドテーマパークさながらの最新型の訓練場で、どれだけ訓練を積んだとしても、現実はそれを軽く飛び越えてしまっていることを、その場で兵士は知ることは出来ない。命令への絶対服従と規律をたたき込まれても、戦場においてのみ有効であるならば、それは集団ヒステリーと何ら変わりはない。

 

 彼らの多くが帰還した後の生活は、アメリカ社会を揺るがしかねない危険因子としてそこにある。

勿論、彼らがそれを望んでいるのではない。彼らが人間らしくあればあるほど、心の傷は深く普通の暮らしが困難になってしまうのだ。

 ベトナム戦争以後、徴兵制が立ちゆかなくなったアメリカでは、大学進学の奨学金や中産階層に届くか届かないかの収入を餌に、低所得者釣り上げるため1973年に志願制に変える。

誰しも生きていかなければならない。暮らしていかなくてはならない。明日のパンを得るために、また国家のために尽くす、自分は正しいことをするという後押しもあり、若者たちは入隊する。ベトナム帰還兵の二人に一人は、その後の人生に何らかの精神トラブルを抱えたとされている。イラク戦争はまだ終結していないが、既に5年が経ち一向に良い結果には到らず問題が積み重なるばかりだ。

科学進歩により機械化された最初の戦争であった第一次世界大戦以後、「兵士の心の問題研究されている。アメリカ現在進行形でさらに強い兵士の育成のため研究を重ね実行に移し続けている。攻撃は最大の防御と信じて疑わない姿勢は、国家安全保障上、戦略上選択せざるを得ないとしているが、果たして本当にそうなのだろうか。

 二夜目は、「ママイラクへ行った」というタイトルとともにイラク戦争派遣された母親たちの生活を追う。

現在までにイラク派遣された兵士のうち女性は一万人でそのうち三分の一が母親であるという。戦場で人を殺した自分が良い母親になれるのかという悩みを持ちながら子育てをしている。

 軍隊ジェンダーレス世界となるのは、フェミのひとたちには喜ばしいかもしれないが、湾岸戦争ではベトナム戦争時二%以下だった女性兵士の割合が、十一%となり戦場にも送り込んだ。さらにイラク戦争では後方支援に限定されていた任務が事実上、戦闘地域へも拡大した。帰還後、PTSDに苦しむ人は多い。今以て好転しない戦局は、人員不足を補うため州兵も派遣する。ある州兵の女性は入隊して半年でイラク派遣された。たった半年の訓練で戦場へ送るとは旧日本軍なみの愚かさだ。

 数日前に、共和党ペイリン氏が「ブッシュドクトリン」について言及された際、口ごもったシーンは、ホッケーママには半径3メートル現実しか関心がないということを露呈させてしまった。いい加減イラク戦争も終わるだろうか。

 アメリカ兵の死者は4千人を超えた。イラク人の死者は少なくとも15万に上るとみられてる。日本では戦後ただの一人も戦争で命をおとしていない。しばしば国際世論では、金しか出さないと誹られ続けても、わたしたちはその金を汗水流して拠出しているのだ。湧き出る金などない。

国家は個人の幸福を希求しないというどうしようもない現実にやりきれない。甘ったるい感傷を持つ自分を蔑む。

  • 女が兵士にならなければ、半径3メートルのことにしか関心がないホッケーママばかりだったのだろう。 戦場で人を殺してきた父親が我が子を見ながら「自分に子を育てる資格があるの...

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