尿意を感じた、これは強烈な尿意だ、これはトイレに行かねば、はやく行かねば危ない、人として終わる。
授業が終わった。スマホを取り出しラインを返信する女や、友達と「さっきの授業のここがわかんないの」みたいな話を始める女や、イヤホン耳に挿して音楽を聴き始める男や、ゆっくり帰り支度を始める男、そんな受講者の誰よりもはやく、彗星の如く、走った、トイレだ、トイレだ、トイレの三文字しか頭の中にはない。そこはトイレしかない世界だ。
ああトイレ、いとしいトイレはすぐそこにある、今は冬だから、暖かい便器に座りたいと、洋式のあったかいトイレの扉を開けてトイレに座る。
このトイレ、暖かい便器のスイッチが入ってないじゃないか、ありえない、なんなんだ。
しかし背に腹はかえられぬ。用を足し、トイレットペーパーを取ろうと思った、カラン。手応えない。おかしい、とホルダーを持ち上げたら、あるべきものはなかった。
しかしせめて替えのトイレットペーパーくらいはあるだろうとキョロキョロ探す。
なかった
そして立ち上がった私の目に飛び込んできたのは燦然と輝く替えのトイレットペーパーだった
真後ろに置いてあったのだ
いやいや
ないでしょ
まって
替えのトイレットペーパーが背中側にあるのは、割と普通だよ…