2015-06-07

彼女との出会い

「いてて・・・・・・資金繰りがこけちまった」

 頭を抱えて、俺は床の上でうずくまっていた。

大丈夫ですか?」

 ふと女の声が聞こえた。床の上から見上げると、気遣わしげな顔で俺を見る、黒髪ロングで利発そうでしかも身持ちの固そうだが惚れるとぐいぐい来る感じの、ひたすら男にとって都合のいい女がいた。

「あの、これ、使って下さい」

 彼女はすっとスカートポケットから札束を取り出して、俺の目の前に差し出した。

「えっ、そんな、悪いですよ」

 まるで彼女の心の有り様を表すように、ぴんと折り目のないピン札だった。

大丈夫です。どうせ表には出せないお金ですから

「そうですか・・・じゃあ洗浄してからします。

口座番号を教えてもらえますか?」

 これが俺たちの出会いだった。その後俺は、彼女税務署労働監査署との戦いに巻き込まれて、我が身の不幸をぼやきながら結局彼女の力になっているうちに、なし崩し的にカップルになったのだ。

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