2010-02-12

母乳の出るお母さんを金で買った

オッス、おら助平。30もちょいと越えて、まわりはひとり者も多いが、結婚した連中も少なからずいる。

既婚者の男どもとしゃべっているうちに、性にかんすることがらで、彼らの共通点に気づいた。腹を割って話せる友達は、サシだったりその場に男しかいないと、夜の性生活についてわりとつまびらかに教えてくれる。その共通点ってやつは、ぼくにはとても羨ましく感じられたことなんだけど、嫁さんが妊娠して、子供が産まれると、当たり前だが、おっぱいが張ってきて母乳が出るわけじゃん。あれをね、みんな飲ませてもらってるんだって。大の父親がだよ?一人や二人じゃないんだなあ、これが。「ここだけの話だけどさ、嫁さんの母乳、どんな味がするのか興味あって、飲んじゃったべ、へへへ」みたいに、こっそり教えてくれるわけ。こっちだって、そんな助平な話聞いたら、がぜん興味が出ちゃうじゃない。「お前も飲んだのか!同じ高校の奴もそんな報告してたよ、世の父ちゃんは変わらんなあ、はっはっは」と笑いながら、ちょっぴり悔しかった。

ぼくにも彼女ができたり別れたりを何度かくりかえしてきて、恋愛を楽しむ時期もそこそこあったけれど、既婚者にしか手に入らないものがあるらしい。会社にいる「エッチなことなんて知りません」みたいな顔している、まじめそうな部長だって、道を歩いている子連れのいかにも普通そうな父親だって、こりゃ子供ができたときは、母乳を飲む行為をしているのかもしれんな。いや、好奇心のある男なら、誰だって嫁のミルクを飲んでいらっしゃるのではないだろうか。「もうあんたバカねえ」みたいに笑われながらも、聖母の優しさにどっぷりとくるまれているに違いない。

考えてみれば、いくら恋愛をくりかえしても、乳首から飛び散る母乳を顔に浴びることはできないのだ。この先、自分が納得する相手とつきあって、なおかつ結婚して、さらに子供を産みたいという状況にまで進むことはまずないだろう(としか思えない)。となると、母乳の味を知らずにぼくは死んでしまうのだろうか!死ぬときにきっと後悔してしまうのではないだろうか!すでに獲得した者にとってはさしてありがたみを感じておらず、経験していない者は過剰に高い価値を置くってことはよくありがちだけど、欠乏感と自分勝手に湧き起こした悔しさに打ちひしがれながら、道でベビーカーを押しているママをおそうわけにもいかないから、ぼくはそれをお金で買うことにした。

いやしかしびっくりしたね、調べてみるとわかったけど、お腹の膨れた妊婦さんや、出産後のママを専門に集めたお店がいくつも存在しているとは。

待合室に入るとすでに先客がソファーに座って、番号で呼ばれるのを待っていた。わりと知的な顔立ちの40代くらいで、スーツを着ている。しばらくすると彼の携帯電話が鳴って小声でしゃべり始めたのだが、どうも今日学会があったためにこの付近に来たらしい。なにやら明日の発表後の懇親会について、場所や時間について電話の相手に話していたが、大学先生なのか、企業にいる人なのかまではわからない。プライベートでは、母乳の味わいについての研究だろうか、ご熱心ですこと!ぼくもあとからプレイルームに入り、ママの前でだいたんに赤ちゃんに変身しながら、ひざの上でぐずって母乳を要求してみた。友達も、会社部長も、嫁さんの前でこんな情けない仕草をしたのだろうか。ぼくは夢中になってミルクをごくごくと飲んで、いつの間にか欠乏感は消え入った。追い求めてきたものが、味自体でないことも思い出した。裸になって、よしよしと微笑むママにあやされていると、不思議なほど安心感が胸いっぱいに広がってくる。待合室にいたあのおじさんも、ママの前ではこんな風に退化しているのかと思うと、ちょっぴり可笑しくなった。

  • その店がほんとなら、その勤めてる人はすげーな。授乳期間中は夫にも胸さわられたくなくて拒絶って人も多いのに(生理的に無理)知らない人とか。そんな人もいるんだね。

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