2008-02-29

父親ウゼェとか思ってる全ての娘たちへ。

10数年前に父を亡くした。私は19歳だった。

昔から父は病気ちなことを理由にあまり働かず、かわりに

死にものぐるいで母が働き、父の医療費生活費を稼いでいた。

それでも私は月々のお小遣いをもらってはいたが微々たる額で

流行りの服も買えず、同級生と一緒に遊びに出かけても

小遣いの心配ばかりで少しも楽しめなかった。

いつも家にいる父のことを邪魔だと思ったし

そんなことばも平気で口にしたこともあった。

当然母には怒られた。父は何も言わなかった。

やがて父は入院し母が泊まり込みで看病することもあった。

私はそれをいいことに彼氏を家に連れ込んだりもしていた。

それは秋のことだった。厳しい食事制限のため

肉も抜かれほとんど味のない病院食しか食べさせてもらえない父が

ふとマクドナルドCMを見て、月見バーガーを食べたいと言った。

母は仕事でいなかった。

いれば、きっと反対しただろう。

病院からマクドナルドは遠かったが、私は車を持っていた彼氏を呼び

目当てのものの買い出しに成功した。

半分冷めてしまった月見バーガーを、父は「美味しい」と喜んで食べた。

それから父を車椅子に乗せて、病院の屋上へ向かった。

父は言った。

「もうお父さん、永くないことを知っとるから……

隠さんでいいよ。」

それから2週間後、父は亡くなった。

出棺時に母は取り乱し、気を使った親族の判断で

母は家に置いていくことになった。

火葬場では、故人と一番近い人間が点火のスイッチを押さなければならない。

一人娘の私が押すことになった。

「しっかり押さんと、お父さんは成仏できんからな」と親族は言った。

目を瞑ってギュッと押すと、それまで出てこなかった涙が出てきた。

初七日のあと、入院していた病院へ置いたままの荷物を取りに行くため

ナースセンターに立ち寄った。

私はあまり病室に行かなかったので看護師の顔をあまりよく知らない、

しかし看護師はみんな私のことを知っていた。

母も私もいないとき、薬をもってきたり点滴を交換する看護師

父はいつも私の話をしていたのだと言う。

貧乏ながらも志望の大学へ行かせることができてよかったとか、

見舞いにきたときに屋上へ一緒に行ったこととか。

その話を聞いてまた皆で泣いた。

それからしばらくして。

病院に置いていた父の私物の整理をしていると

二つ折りの、くたびれた黒い皮の財布があった。

パスケースの部分には、七五三のときの私の写真が入っていた。

着物を着て笑っている私の写真。それより大きくなってからの写真

私が触らせなかったから、持っていなかったのだ。

小銭入れの部分には、いくばくかの小銭と、ティッシュに包まれた

「蛇の皮」が入っていた。

「蛇の皮を財布に入れているとお金持ちになる」

そんな話をどこかで聞き込んでいた小学生の私は、通学路の途中に落ちていた

蛇の皮を持ち帰った記憶がある。

「そんな汚いものを拾わないで!」

母には怒られ、すぐに捨てるように言われたが、父はゴミ箱からそれを拾っていたのだろう。

あれから何年もたったのに、まだ残っていたなんて。

四十九日が終わってからも、亡くなったことを知らなかった父の知人が

訃報を知り家を訪ねてくることがあった。

私とは面識もないその人々もまた、私のことをよく知っていた。

○○大学に通っているんですね。足が速くて駅伝でも二区を走っていたとか。

父はあちこちで、たいして出来もよくない私のことを吹聴して歩いていたのだ。

父が亡くなった時につきあっていた彼と別れ、

その後も出会いと別れを繰り返し、結婚できないまま現在に至る。

そして、こんな私を

無条件で誰よりも愛してくれていたのが、父しかいなかったことに気付かされる。

いろんなところで見かける家族連れ。

中でも、小さな娘と歩いている父親の顔は、いつも幸せそうに蕩けている。

ちっとも気付かなかったが、私の父もあんな顔をしていたのだろう。

娘を愛さない父親なんていない。

もしもそんな父親がいるとすればそれは男ではない、違う生き物だ。

http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-320.html

だからこんな話でも涙が出てきて、止まらない。

そんなオチだ。

  • 個人的な経験を延々と語ってそれを一般論化させようとしているのが嫌だ。

  • 増田にとっていい思い出になったね。人が死んでこういうのは失礼だけど、でもよかったね。 でもいろいろな家庭があるから、それぞれの人生の中でそれぞれが何とか位置づけしていく...

  • あなたのお父さんはすばらしいひとだったかもしれないけれど 世の中には家族に興味すらない人もいっぱいいる。 それは男じゃないとか書いても戸籍もチンコもついてるわけ。どっから...

  • ウゼェ…まで読んだ。

  • 元ネタとこのエントリを読むBGMとして、 メタルギアソリッドのテーマが最強すぎて泣いた。

  • 「娘を愛さない父親」は確実にいる。 「愛さない」どころかひどい場合は性的対象として弄ぶのみという父親もいる。 そんな父親は「違う生き物」に見えるかもしれないけど、悲しいこ...

    • 最後の一行の意味がよく分からん 何を言いたいのか

    • 娘を性的対象として弄ぶ父親も、 元増田のリンク先の、娘が父親を連れてきたからと言ってうろたえる父親も、 娘を愛している事には変わらないと思うよ。 それは娘=自分の所有物(だ...

  • 無条件で誰よりも愛してくれていたのが、父しかいなかったことに気付かされる。 母親は無条件では愛してくれなかったんだ。 つーか働きもせず子供の面倒も見ない=子供への責任...

  • 泣きそうになった。父親っていいものなんだね。 私にもいたらよかったのにな。とか思ってしまう。父親が死んで悲しめるっていうのは貴重なことだと思う。

  • 今年度 総合 タイトル ブクマ数 日付 カテゴリ 1 57 行き着けの定食屋のDQN撃退法がすごかった 1023users 2010/04/19 生活・人生 2 110 夢をあきらめないということ ...

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