■往来の真ん中に群がるおばさんたち
残業を終えてとぼとぼと帰宅する俺のほうを見てなにか言ってるおばさんが四、五人いる。
見えただの。出てきただのなんだの。
少なくとも俺には関係ないことだろうと思い、目を合わさないよう通り過ぎたが、しばらく歩いてふと気がついた。
今日は十五夜、中秋の名月だ。
振り返って見上げると叢雲の向こうにまるい月がある。
おばさんたちは叢雲の合い間から月が顔を出す瞬間を待っていたのだ。
もし帰路におばさんたちがいなければ、俺は今日が十五夜と気づかないまま一日を終えただろう。
ありがとう、おばさんたち。
帰宅後、俺はマンションの屋上に出て、生ぬるい夜風に吹かれながらビール片手に、ひとり十五夜の月を見た。
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