10年前、18歳だった私の前にそれは突然現れました。
高くて、とても美しい山です。
私はその山に登ろうと思い、麓へ行こうとしました。ところが、なかなかたどり着けません。
きっと本気で登ろうと思っていないからだと思いました。
私は山に向かって、私は本気です。どうか、どうか、登らせてくださいと言いました。
すると、やっとのことで麓にたどり着くことができました。
それから毎日黙々と登り続け、2年かかってようやく中腹までやってきました。
そんな時、遠くの別の山から声が聞こえてきました。
20代のうちに遊ばなければ。20代のうちに恋愛しなければ。20代のうちに結婚しなければ。ならない、と。
遠くの山から聞こえてくる声。その声につられて、私は一瞬、山を下りようかと思いました。けれどもし今下山すれば、必ず後悔することになるだろうと思いました。
毎日のように聞こえてくる声を無視して、私はさらに山を登りました。
山頂はすぐそこです。切り立った崖の上です。
頂上には、何かあるかもしれません。何もないかもしれません。
それでも私は登るのです。