■たぶん忘れてしまう
今直面している喪失と、
その喪失感をこれから忘れていくという喪失。
今ここにわだかまっている想いはやがて
消化されていく。
溶けてゆく。
形と色を失う。
歯触りもにおいも失う。
いつの日か思い出すこともあるだろう。
でもその時頭をよぎるのは一瞬の影で、
輪郭すら掴むことは難しい。
そうなることを、もう経験的に知ってしまっている。
この感情を形に留めようと
こうして紡ぐ言葉も
時がたてば、
録音していた独り言みたいに
聞き返すのがどこか気恥ずかしい
自分でない誰かの声のように響くだろう。
それでも書き留め続けている。
喪失の甘美さに酔っている? それもある。
忘れることが耐えられない? それももちろんある。
やはり痛いのは痛いし、辛いのは辛いけど、
この感情の輪郭を正確に描写できたなら、
その言葉には何かが宿る気がするのだ。
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