本も処分したし、ありとあらゆるものを処分した。目に見える範囲では痕跡が消えたはずだ。
台所のマグカップの茶渋が、いつから付いてたのか覚えていない。もう半年、それ以上漂白してない。
そしたら急に一緒に居た時間に思わされたので、慌てて漂白した。消えていってほしい。ハイターの泡は時間が経つにつれて透明になっていく。私の気持ちもそうであってほしい。
忘れたいと思いたい。生傷抱えて仕事なんかと思ったが、仕事があるからまともでいられる。
でもふと、向こうも同じような気持ちなのかもしんないと思うと楽になった。もしかしてあなたも辛いの?と。意外と未練がましく私を立ち上らせたりしてんのかもしれないと。幸せになるために漂白した。マグカップは買ったばかりみたいに真っ白に。何もなかったみたいになってくれた。