子どもだった頃から同じ音だ
落葉松の枝に散らされた雨のしずくが
不規則に屋根を打つ音はむしろ乾いていて
音楽とは似ても似つかないのが快い
凍りついた霜のような模様のガラス窓と
こてあとが残してある白い壁と
ゆがんでたてつけの悪い扉がこの家の特徴だ
毎年夥しい虫が家の中で死んでいる
もう子どもの泣き声や笑い声は聞こえない
人は年をとってだんだん静かになる
表面はどんなに賑やかでも
身近な死者が増えてきた
彼らにしてやれたことよりも
してやれなかったことのほうがずっと多い
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