2009-09-23

日航再建案 - 自由競争下においては、借金棒引きや踏み倒しは事業の破綻と同じ

Bad JAL、Good JAL

日本航空の再建案で、不採算事業を切り離して分社化し、採算事業だけを集めた方を存続させて、不採算事業を集めた方は破産させて踏み倒すという話が出てきているらしい。

破産処理をすると、航空事業の継続が難しくなる、特に、空港離発着権という最大の権益を現金化して負債に当ててでも支払えと言うのが、金を貸している側の理屈であり、場合によっては、離発着権が負債の対価として、ばらばらに分配される事になりかねない。すると、一つの航空会社としての存続は難しくなり、小さな航空会社が複数できるという形になって、国際線の運行が難しくなる場合もありえる。国際線は相手国があっての話であり、話し合いの余地が無い場合もある。少なくとも、日本大使館がある場所へは、日本航空会社直行便か、相手国の航空会社直行便がある事が望ましい。どちらも無くなってしまった場合には、領事館に格下げする等の手段も必要となる。

Bad Bank、Good Bankに切り分けて負債を処理するという話に発想を得たのかもしれないが、Bad Bankは負債を一時的に飛ばしておくだけで、その負債は、Good Bankの上げる収益で複数年という時間をかけて償還していくという仕掛けである。これ以上負債が増えないという前提がなければならない。

スケジュールが、負債の飛ばしの本質なのだが、通常の事業会社においては、このような発想は成立しないというのが現実である。

そもそも、リスケジュールによって負債の返済が先送りになった時点で、追加の融資は全部止まるというのが、金融世界常識である。

それこそ日本金融機関のように、預金につける利子は雀の涙の低金利横並びで、貸し金につける利息は制限一杯というぼったくり商売が認められていて、よほどの間抜けでない限り赤字になるわけが無いという楽な商売でも無い限り、負債の飛ばしによるリスケジュールが成功する可能性は限りなく低いということを金融機関は身にしみて理解している。

江戸時代の棄捐令が、結果的に旗本達を困窮に追いやったように、自由競争下においては、借金棒引きや踏み倒しは事業の破綻と同じ事になるのである。

従って、もし、Bad JAL、Good JAL方式が成立するとするならば、それは航空会社としての独占的地位をGood JALに付与し、自由競争を廃止するということになるであろう。

破綻によって人件費レガシーコストを切り離すが、事業は継続できるようにするという、ムシの良い方法を探すということは、つまるところ労働者との約束だけを切り捨てる方法を探す事に等しく、前向きな努力とは言いがたい。

他の破綻した事業体と同様に、破綻処理を淡々と進める以外に筋を通す方法は無いし、立て直すのであれば、相応の実績のある経営者を投入しなければならないが、二社による寡占体制が続いた為に経営者としての人を得る事が出来ない。他の業界から大物を引っ張ってくるとしても、郵政民営化の見直しで、招いた経営者をたたき出した今の政権に協力する者はいないであろう。

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