2007-07-21

またしても生活保護打ち切り死亡

北九州市・「モデルケース」とは

昨年もあった北九州市での生活保護孤独死の問題。http://www.city.kitakyushu.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=18100 今回発見された男性保護打ち切り後、就職した「自立したモデルケース」という人でした。その男性が7月10日に死後1カ月以上の状態で発見されたのです。

残された男性日記には「働けないのに働けと言われた」、「おにぎり食べたい」などと書かれていたということです。52歳のこの男性は、昨年12月から生活保護を受けていましたが、今年4月に就労の意思を示し、受給を辞退したと市は説明しています。

 男性の主治医から病状回復の報告があったことなどを受け、福祉事務所男性に就労を促したといいます。北九州市では、昨年、生活保護の申請すらさせてもらえなかった人の孤独死が問題になり、新市長は行政の仕組みを検証するとしていました。しかし、今回の事件を見ると、どうやら何も変わっていないようです。

 北九州市が“モデルケース”としているのは、厚生労働省が2005年度から実施している「自立支援プログラムhttp://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1215-8a.html によるものだと思われます。内容としては、「保護の実施機関が策定し、組織的に取組み」をするとしています。具体的には、

(1) 管内の被保護世帯全体の状況を把握

(2) 被保護者の状況や自立阻害要因を類型化し、それに対応する個別の支援プログラム策定

(3) 支援は保健所医療機関、ハローワークなどが連携して組織的に実施する

 昨年の12月現在プログラム策定自治体は685(80%)、422の自治体が就労支援プログラムを策定していると厚生労働省発表しています。

 厚生労働省が示した方針は「公平・自立支援の観点からの母子加算の見直し、自立支援プログラムの推進による就労や退院の促進、他法優先の徹底(人工透析費用)」として、国費約400億円を削減するということです。

就労促進型福祉の結末

 国は生活保護世帯、母子家庭障がい者などに対して「自立支援」という名の就職を強いているふしがあるように思います。就職できることは良いことですが、国費削減のために、低い賃金の労働者を産み出すことになっている側面もあります。就労実績の数字の中に今回亡くなった方のようなケースも含まれているのです。

 さらに、全国福祉事務所会議の資料には福祉事務所ごとの実績が記されています。これはまるで福祉事務所ごとの「どれだけ削減したか」を表す成績表のようです。

 恵泉女学園大学坂井誠氏 http://www.keisen.jp/univ///message/k_sakai.htm日本モデルとする「アメリカの就労促進型福祉」を分析して、一時期、好景気に支えられながら就職はうまくいったが結果的には「自己負担能力の高い階層が市場を通して社会サーヴィスを購入しており、貧者の最低限必要な便益が削られる代償として、富者が十分すぎる欲望を満たしていることになる」(『現代アメリカ経済政策と格差』)http://d.hatena.ne.jp/asin/4535555354 としています。

 加えて、「『小さな政府』論に傾注することの危険性は、それが必ずしも政府活動の効率性をもたらさない点に求められる。たとえば、GDPに占める社会支出(医療年金、福祉、教育など人間生活を維持するために社会が必要とするサーヴィス支出)は、『小さな政府』の国と『大きな政府』の国でほとんど差はないという」(前掲書)と指摘しています。

 

国民相互の理解が不可欠

 

 先日、ある障がい者関係インターネット掲示板に「障がい者施設の収入が減ったからといって通所日を増やす施設はつぶれろ」という趣旨の書き込みがありました。この背景は、障害者自立支援法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H17/H17HO123.html で、それまで月払いの施設への補助金が、毎日の利用日数実績による報酬に変わりました。単価自体が下がっているので、それまでの職員の給料を確保するには、通所日を増やすなどの工夫が必要になっています。

 この人は、「利用者から1割の利用料をとっているのに」という思いがあるのだと思います。反論として、「国がこういう仕組みを作ったのだから」という書き込みもありましたが、利用者と施設への「対立」という図式になっているようです。

 それは、介護保険でも同じです。仕組みを作っているのは政治なのに……。そして、生活保護でも、憎しみ合う構図が作られています。年収200万円未満のワーキングプア労働人口の3人に1人になっています。すると生活保護より低い人たちがたくさんいて、生活保護費を下げるべきだという世論が増えています。

 派遣社員契約社員などの非正規雇用が増えていることを問題にしないで、国民同士が憎しみ合う構図が作られています。それは、年金問題での社会保険庁職員と労働組合たたきにも見られます。政治の責任転嫁です。

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