受験に追われた私は夜の新宿駅の雑踏に揉まれながら帰路についていた。その人に気がついたのは何度か新宿駅に足を運んでからであった。その女性は毎日決まって新宿駅西口の柱で詩集を売っていた。前を真っ直ぐ見つめ微動だにしないその女性に私は恐怖すら感じた。毎日毎日、何時も前を見つめている女性に興味を持った私はスマホでその女性について調べた。どうやら彼女は旦那さんとしたためたその詩集を何年も同じ場所で売り続けているようだ。彼女には信念があるらしい。あの真っ直ぐな目は信念の表れなのだろう。
私は彼女のその目に恐怖を感じていたのか。私が信念を持ったとき、彼女の目を美しく感じることができるようになるのだろうか。