■友達とセックスするような人とは友達になれない

はまってる料理の話をしたらうちにつくりに来てよーと言われた。

いいよーと答えてはみたものの男性の家に上がるのなんて彼氏以外ではないからどうしたものかと悩んでしまう。彼氏いる時なら断るんだけどなと思いつつ何度か言われたので作りに行った。

自分的にはちょっといい感じかも？と思っていたのもある。

とりあえずお互いフリーで一番連絡取りあってて、このままいけばそうなるよなぁそれもいいかなどうなんだろうという迷いの中にいた。だいぶ生きてる世界の違う人のような気がして、そういうのが新鮮で惹かれていた部分もあったのだろう。でもどうなんだろうと思うことの方が圧倒的に多くて、いっそのこと一気に自分の殻を壊して飛び出していくかフェードアウトするかのどちらかにしたいと思っていた。

料理を作っておいしいって言って食べてくれて、それから車で送っていってもらった。

手をつないでちょこちょことスキンシップをして。

自分はもてる方ではない。男性経験もほとんどない。手をつなぐのは恋人以外はあり得ない。そう思ってる。だから相手もその気があるんだろうと思った。好意はあった。不安も大きかったけど、それは確かだった。

それからよく二人で出掛けて、手をつないでいることが増えて、ふざけて抱き締められたりして。

わからなかった。そういうのは恋人以外とはしないと思ってたけれども、時間がたつにつれ相手はそうでもないようだということに気づいてしまった。時々期待しすぎて重そうな顔をされた。そういう顔をされるたびに悲しくなった。自分の思いばかり膨らんでどんなにあっても声を聞いてもさみしくてたまらなかった。どういうつもりなのかそれとなく聞いても当たり障りのない言葉しか返ってこなかった。

しばしば相手は連絡が取れなくなる人だった。後から聞いたら友達の家に泊まりに行ってた、友達の家で飲んでたら朝になってた、友達と遊んでたからそういうことをよく言っていた。その友達と言うのは元カノもいたし昔好きだったという人もいたけれど圧倒的に女が多かった。鈍感な自分はずいぶん長いこと気付かなかったが、ある日わかってしまった。あぁこの日と友達とセックスしてるんだ。

どういう理由でそれを悟ったのかはっきりとは覚えていないが、言葉の端々にのぼる状況を組み合わせていけばそれしかなかった。考えられない世界の人だと思った。異邦人、異星人、そう呼ぶしかないような感覚に混乱した。あの人にとっては、手をつなぐことなんてなんともないんだろう。そこに過剰に意味を見出す自分のことをきっと自分がそうするように奇異な目で見るのだろう。そう思った。私の価値観が一つ一つの行動に意味を置きすぎているのか、それともあの人の価値観が人の心の中に踏み込みすぎるのか。少なくともお互いにとって利益がないことだけは確かだった。私は消耗し、さみしさを抱えて、毎日泣いた。気持が溶けてなくなるまでそんな夜が続いた。

肌が触れ合うようなコミュニケーションは恋人としかできない。だから相手がそうではなかったとき自分は耐えられなかった。その温度差がさみしさの原因だった。不安の原因だった。彼にとっては私は友達ですらなかったのだ。私にとっては友達以上だったのだ。友達とセックスする人と私はたぶん恋人にはなれただろう。でも友達にはなれなかった。その距離感は私からすれば恋人以外の何物でもなく、またそのセックスへの価値観は軽く扱われているようにしか思えなかったからだ。

幸いにも相手には重かったのだろう。関係はフェードアウトしていき今では接点すらない。あの時あちらの世界に自分の価値観をすり合わせようとしなくてよかったと思う。その部分だけは自分は妥協できないのだと知ってよかった。

Permalink | 記事への反応(7) | 03:16

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