2007-12-17

iPS細胞の話を大学の話に転嫁するなんて…

山中伸弥教授iPS細胞の作成に成功したというニュースネットでも話題になっている。その中でたまに見受けられるのが、「やはり京大>>>東大」「最難関の理科三類何やってるんだ」という声。とりあえず、この辺について少し書いてみる。

教育機関としての大学研究機関としての大学

大学には教育的機関としての側面と教育機関としての側面がある。前者のいわゆる「偏差値」は東大の方が京大よりも圧倒的に上に位置しているが、研究機関として大学を見た場合そうとは限らない。というのも、各大学にも得意不得意はあり、生医学の分野に関しては京大の方が東大よりも進んだ研究をしている。上記の発言は研究機関、教育機関の両者をごっちゃにした発言であり、何ら意味をなさない。もし両者を結びつけて考えるのであれば、山中教授を生んだのは神戸大学であるということも考慮しなくてはならなくなる。

この研究成果がブレイクスルーであることは間違いないが、それが他大学研究内容を否定するものであるということは決してない。

京都大学の意地

社会的な認知度・威厳で京大東大に劣るのは事実である。そして簡単な指標として京大東大に対し優位にあるのがノーベル賞の受賞者数だ。京大ノーベル賞受賞者日本一アイデンティティとしている面がたぶんにあり、近年ノーベル賞級の研究者の囲い込みを激化させている。この京大の姿勢は大変評価出来るものである。というのも、研究者に対しそれなりの資金と研究設備を用意してあげるというのは、たとえそれが「大学の威厳を保つため」であっても、研究者にとっても社会にとってもありがたいことであるからだ。問題があるとすれば東大は外部から有能な人物を引き抜くと言うことにあまり熱心でないということだろうか。

近年日本では研究に対する助成金が非常に少なくなっており(「官僚は何をやっているんだ」というなかれ、「税金は低く、社会保障は手厚く」を望む大衆に責任がある政策である)、企業が行おうとしない基礎研究は衰退の一途をたどっている。げんに東大研究していたヒトゲノム研究成果は予算の少なさから全て欧米に根こそぎとられてしまっており、iPS細胞の件がいつ同じ状態になるとも限らない。科学技術は怖いものでもあるが、しかし確実に人を魅了する。「研究」が軽視される現状を変えるような人材、科学技術に対する畏敬の念と理解を持った人間企業や国のトップに入ることを望みたい。

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